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きみこいし
きみこいし
novelistID. 14439
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ちいさく前にならえ<前編>

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第1章:十代目執務室は今日もにぎやかである

「う゛ぉぉぉぉぉい!!こりゃ一体どういうことだぁ!!」
殴り込みかと疑うような勢いで、ボンゴレボス執務室に飛び込んできたスクアーロは、まっすぐにツナヨシの元までズンズンと進むと、左手でドバンと机を叩きつけた。
ご自慢の超合金製・義手の破壊力はすさまじく、手の形に机が凹んだ。
(おい、コレ新調してまだ日が浅いのに・・・)
なぜか、十代目執務室の物品破損率は非常に高い。しかも、ちょっとしたキズや傷みといった、修復できる破損などではなく、即スクラップ行きクラスの破損ばかりなのである。
ただでさえ、湯水のように予算を消化するやっかい部隊に、はた迷惑な戦闘を繰り広げる幹部などを抱えているドン・ボンゴレにとっては、頭の痛い問題だ。
加えて、衝撃に机上に積まれていた書類の山が雪崩を起こし、床にまで散らばったが、目の前の彼はまったくおかまいなしだ。
「・・・えっと、スクアーロ久しぶり」
仁王立ちするスクアーロを見上げ、彼の勢いに呆気にとられながらも、ツナヨシはため息とともに挨拶をかえす。
「ボクもいるよ、ツナヨシ」
「あ、マーモンも久しぶり」
よくよく見るとスクアーロの長い銀髪に黒衣の赤ん坊がつかまっていた。いや、からまっていると言った方が正確かも知れない。「ムギュ」とか「フギャ」とか呟きながら何とかスクアーロの銀髪から脱出したマーモンは、もぞもぞと彼の体を移動し右肩に陣取った。どうやら座り心地はあまりよろしくないらしく、三角に結ばれた口元は少し不満そうだが、なんとか落ち着いたようだ。
それは、いいのだが。

―――――で、何でこの二人がここに?
その疑問を真っ先にツッコんだのは、ボンゴレ十代目であるツナヨシを補佐するために、今日も朝から執務室に詰めていた、獄寺隼人だった。
「てめぇ、スクアーロにマーモン!何しに来やがった」
彼は手に持っていた書類を叩きつけるようにサイドテーブルに置くと、ザザッとスクアーロの前に立ちはだかり、ギロリと鋭い眼光を向ける。ツナヨシを背後にかばう格好だ。
ツナヨシの右腕で<嵐>の守護者を継承した、この美青年はとても血気盛んなお年頃のようで。なおかつ彼ら、独立暗殺部隊ヴァリアーに並々ならぬ敵対心を持っているようで。ことあるごとに、何かと突っかかっている。
いや、よくよく考えるとヴァリアーだけじゃないよな。神出鬼没な<霧>や我が道を行く<雲>、天然ド・ピーカン男の<晴>など、同僚であるはずの守護者にすら鋭い眼光と舌鋒が火を噴く。
まあ、相手が相手なだけに6割くらいは致し方ないのかもしれないが。
対して、執務室に詰めていたもう一人の守護者も口を開いた。
「おっ、ひさしぶりなのな。スクアーロ、ちびっ子も。
なあ、スクアーロ。いっちょ試合してかねぇか?」
獄寺の隣で書類をめくり、のほほんと挨拶するのはツナヨシの<雨>の守護者にして、天下無敵の殺人剣・時雨蒼燕流の継承者である山本武だ。こちらも獄寺と同様、ツナヨシの補佐(というか脱走防止要員)として、執務室に詰めていたのだった。
「いや・・・山本、勝負はまた後でだぁ。それより、これを見ろ!!」
未練があるのか(この二人の剣士は結構気があっているようで、裏でちょくちょく会っているらしい)残念そうに顔をしかめたスクアーロだったが、本来の目的を思い出すと彼は腕に抱えていた『荷物』をドスンと机の上に置いた。

その手荒な扱いに、当の『荷物』がスクアーロを怒鳴りつける。
「・・・てめぇ、このカス鮫!何しやがるっ!!」
少し高めの声。その声に、目を向ければ――――
まず視界に入ったのは、革靴を履いた小さな足、膝丈の靴下、黒の半ズボンにサスペンダー、白いシャツに黒のネクタイ。さらに視線を上げると、将来性を感じさせる幼いながらも整った顔立ち。にもかかわらず、眉間に皺を寄せ不機嫌そうに口元をぎゅっと結んだ、
―――――黒髪の男の子だった。
「え、何?この子・・・・はっ!まさかスクアーロの隠し子?!」
「ちがう!!」
「相変わらずボケた頭してやがんな、ドカスが」
「はい?」
ちょこんと机に置かれた『荷物』もとい、少年が尊大な口調で宣う。
「・・・・えーと、キミお名前は?誰かの親戚?」
先ほどの声は何かの聞き間違いか、幻聴だろうと処理したツナヨシは、にこにこと微笑みかけながら、目の前の少年に手をのばし、頭をなでる。
子ども特有の体温。さらさらの髪が指にからまる。あったかいような、くすぐったいような感触とやさしい匂い。
(そういや、ランボやイーピン、フウ太も撫でられるのスキだったよなぁ。あっという間に、自分の身長を追い越したせいで、もうグリグリすることもかなわないけど)
ぼんやりと感傷に浸っていると、少年は鬱陶しげにツナヨシの手を払いのけた。
「・・・うぜぇ。掻っ消す」
そうして睨み付ける眼光の鋭さ。少し高めの声は、声変わりしていない少年のそれだが、声に似合わぬその内容は某・暴走部隊の隊長を彷彿とさせる過激なお言葉だ。
「あはは、そんなどっかの誰かみたいな口癖真似してると、ホントどうしようもない、ぐうたら、わがまま、オレ様、アル中、暴力男になっちゃうよ」
はっはっはと明るく笑うツナヨシとは対照的に、スクアーロとマーモンの表情が微妙なものへと変化していく。例えるなら、大型肉食獣の尻尾に、それと気付かず飛びかかり、じゃれついている子犬を目撃したかのようだ。
二人の微妙に生暖かい視線に、ツナヨシは首をかしげる。
「え、何?二人とも」
「ツナヨシ、キミって子は・・・」
「それ、本人だぞぉ」
「・・・・え・・・ザンザス?マジで?」
神妙な顔つきでコクリとうなずくスクアーロ。
「ひぃぃぃぃ!」
その瞬間、ツナヨシは即座に椅子から立ち上がり、残像すら見えるほどの素早さで、回避行動をとった。と同時に、つい一瞬前までツナヨシがいた空間を炎が灼き尽くす。炎はオフィスチェアを吹き飛ばし、背後のガラス窓(一応防弾なのだが)をも豪快に吹き飛ばしてくれる。
割れた窓から風が室内に流れ込み、かろうじて灼け残った書類を空中に巻き上げる。
「こっえええーーー」
ハラハラと書類が舞い散る中、机の下からこっそりと頭を出したツナヨシは改めて、目の前に座っている人物が『誰である』のかを把握したのだった。
確かに、よく見ると少年のふてぶてしい態度はザンザスのそれだ。
黒髪に紅い双眸。褐色の肌には古傷はみられないものの、身体的特徴も彼と同じだ。そして極めつけは、その手で光を放っている『憤怒の炎』。ボンゴレファミリーでも二代目と同じ『憤怒の炎』を宿す人間はただ一人。さらに、絶対的精度を誇るツナヨシの超直感も『まぎれもなくザンザス』だと告げている。
理解はできたが、予想外の展開にツナヨシは思わず呻いた。
「なんでこんな事になってんの・・・」
「それはオレが聞きたいぞぉ」
ツナヨシの言葉に、げんなりと頭を抱えたスクアーロだった。