戦争トリオ!3
昼休みの雷神高校屋上。
「臨也っていつもコンビニか購買だよね。そんなんでよく健康でいられるね」
「そういう帝人くんは何でいつもバランスのいい自作の弁当食べてるくせにそんなひょろいの?あ、ドタチンその卵焼きちょーだい」
「勝手に食うなよ。…けどまぁ確かに帝人はもっと食った方がいいんじゃねぇか?」
「無理だろ、小食だしよ」
「そうだねー、もともと帝人くんは筋肉とかつきづらい体質っぽいし。にしても、今日もセルティの作ってくれたお弁当はおいしいなぁ、セルティラブ!」
「箸振り回さないでよ新羅」
そこでは戦争トリオと、その数少ない友人2人が昼食を取っていた。臨也、静雄、帝人の3人は仲が悪いが、いつでもどこでも戦争を繰り広げているわけではない。というか結構一緒に行動していたりする。
「別にこれといって支障はないからいいんだよ」
「でもそんな細くて気弱そうな見た目じゃ、しょっちゅうカツアゲとかされそうだよね」
「前はよくあったけど、最近はかなり減ったよ。撃退できるようにもなったし」
「ああ、臨也と静雄との喧嘩か。確かにお前ら街中でやりあったりもするしな、顔も知られてるわけだ」
「よかったじゃないか臨也も静雄も!君たちが人のために何かするなんて、きっとこれが最初で最後だよ!」
「よし新羅、歯ぁ食いしばれ」
「まず手始めに運び屋にあることないこと吹き込んで、っと…」
「すみませんでした!」
拳を握り締めた静雄と携帯を取り出した臨也に新羅は即効で謝った。
「ちょっとやめてよ二人とも。新羅が死んだら僕、自分で手当てしなくちゃいけなくなるじゃん」
「お前の心配はそこなのか」
「え、他に何が…あぁ、セルティさんの同居人がいなくなっちゃうか。できればセルティさんを悲しませたくはないなぁ」
「それを素で言えるのが帝人くんの凄いところだよねぇ」
携帯をしまった臨也は帝人の発言に対し呆れたように言った。
「そう?臨也や新羅よりはまともなこと言ってると思うけど」
「臨也と一括りなんて酷すぎるよ帝人くん!」
「とりあえず君たち俺に手をついて謝れ」
「だったらお前は全人類に腹掻っ捌いて詫びろノミ蟲」
「イヤだよ!シズちゃんこそ全人類に謝罪しながらくたばれ!」
「いっそ2人とも死んだら世のため人のため、何より僕のためだし円満解決だと思わない?」
「「思うか!」」
「お前ら食事時くらい落ち着けよ」
京平のツッコミにより場はひとまず納まった。
「…あ、そうだ新羅。今日の夜、セルティさんに料理教えることになってるんだけど、何か食べたいものとかある?」
「ええ!?セルティが僕のために料理を!?まさに歓天喜地だ!今夜は赤飯だね!」
「え、新羅お赤飯食べたいの?変なオーダーだね、別にいいけど」
「いやいやいや今の流れでそれはないでしょ。ていうか料理教えるって事は帝人くん、新羅たちと一緒に晩御飯食べるの?」
「まぁ、普通にそうなるかな。楽だし」
臨也の問いに軽く答え、そして思いついたように続けた。
「もし予定とかないなら皆も来れば?セルティさんもできればいろんな人に食べてほしいって言ってたし」
「…セルティが?」
「そう。僕は臨也も静雄も嫌いだけど、ご飯は皆で食べたほうがいいし。セルティさんも静雄に会いたがってたし」
帝人は何でもないように言う。
「……前から思ってたけど帝人くんって、喧嘩中以外はあんまり俺やシズちゃんに敵意とか殺意とか向けてきたりしないよね」
「そういえばそうだね、臨也と静雄は結構色々言ってるのに」
「まぁ帝人は二人と違ってもともと温厚で平和主義な普通のやつだしな」
「…普通のやつが鞭なんて持ち歩くか?」
静雄の呟きは皆(京平でさえも気まずげに視線をそらして)スルーした。
「んー、まぁ京平の言った通りだよ。それに僕が臨也と静雄を嫌うのは、二人が僕を喧嘩に巻き込むからだから……」
帝人は目を細める。一瞬、目が光ったように見えた。
「それがなければ二人の事は嫌いじゃないよ。どちらかといえば好きな部類に入るかな」
(だって君たちは、僕の愛する『非日常』そのものだもの)
もちろん帝人の心の呟きを聞き取るものはない。帝人はにっこり笑って立ち上がった。
「じゃ、僕職員室に用あるから先行くね。新羅は放課後までに食べたいもの決めといて」
そう言ってさっさと屋上を去っていった。
(うーん、さすが帝人くん。二人とも見事に固まってるよ)
(ショックだったんだろう、色々と…)
(そろそろ自分の気持ちに気づいてもいいと思うんだけどなぁ)
(とりあえず、コイツらどうすんだ)
(ほっといていいんじゃない?大丈夫、臨也も静雄も強い子だから!)
(もはやそういう次元は遥か彼方の果てに吹っ飛んだがな)
(むしろ静雄が吹っ飛ばしたんじゃない)
(そうだな)
(次の授業なんだっけ、公民?)
(いや、古文だ)
(あの先生の話し方って眠くなるよねー)
(クラスの3分の2ほどは頭ふらふらしてるよな)
(ところでドタチンは今夜ウチ来る?)
(ん、そうだな…。迷惑でなければ行こうと思う)
(わかった、我が愛しの妖精に伝えておくよ。あぁ、喜ぶセルティはさぞ可愛いだろうなぁ…)
(……って言うかいつまで俺たちを放置するつもりなのさ!)
(あ、そういえば臨也と静雄いたんだっけ)
(忘れてやがったのかテメェ…)
(仕方ないだろ、僕の頭は今セルティでいっぱいなんだから!あぁセルティ!)
(…俺も大概アレな性格だけどさぁ、お前もだいぶ救いがないよね)
(…珍しく同意見だ)
(あ、チャイム鳴った)
((…………))
(お前ら帰るぞ)
(((はーい)))