二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

Big America.1:TEXAS

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
テープで蓋をされたコルク色のワックスペーパーを乱暴に引き千切ると、バーベキュー・ソースの香りがスタートダッシュを切るランナーのように驚異的な速度でアメリカの鼻腔へ飛び込んだ。正方形の紙の中からセサミで着飾る分厚いバンズが顔を出し、そしてその更に内側で、瑞々しさも、香ばしさも、何もかもを余すことな く声高に主張する色取り取りの恋人たちの姿を見つける。バンズ、レタス、ビーフ、ピクルス、パイナップル、オニオン、トマト、レタス、バンズ。身を寄せ合って整列する彼らを前に、アメリカはいよいよ舌の裏側に溜めこんでいた唾液を大袈裟な音を立てて飲み込んだ。そして待つことなく、大口を開けて、並びのいい白い歯で、かじりつく。



「君も食べ物だったらよかったのに」

 バーガー袋の底に溜まったソースと、バンズから飛び出たオニオンを指でつまみあげ、まだ肉の味わいの残る口にまた放り込んだ。大好きなのにいつだってうまく食べられない。満たされた胃袋の重みに心酔しながらも、唇を尖らせたアメリカが、申し訳ない程度にフライドポテトをかじる日本にぽつりと語った。君も食べ物だったらよかったのに。

「そうしたら俺が愛をこめて食べてあげられる。血の一滴だって取りこぼさず、綺麗にぱっくり食べてあげるよ。俺は君のことが大好きだからね」

 日本は表情をぴくりともを変えずに(でも日本は内心酷く困っている。アメリカはそれにすぐ気がついた)フライドポテトを口の中へ放り込む作業を中断した。

「おいしくないですよ、こんな爺さん」
「でも君は料理上手じゃないか」

 だからきっと大丈夫なはずさ! 百パーセントの自信に満ちた声でアメリカは言う。アメリカは日本を信じていた。友達を信じることは当たり前だ。ああ、この世界中の人たちに向かって叫びたい。教えてあげたい。

 日本の作るご飯はとってもおいしいんだぞ! 彼の腕は本物だ!そんな彼が、不味いわけないじゃないか!

 ふわふわのパンに挟まれた日本はきっとおいしい。バーベキュー・ソースにケチャップ、マスタード。さて何をかけようか。時にはチーズを挟んでもいいだろう。一日三食、毎日食卓に並べてあげる。アメリカは親指の腹で袋の中で取り残されたバーベキュー・ソース拭いとると、絵筆で遊ぶように日本の頬へそれを塗った。ああ、やはり。黄色い彼にバーベキュー・ソースはよく似合う。
作品名:Big America.1:TEXAS 作家名:いかすみ