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novelistID. 1345
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like a cat and a mouse

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俺はいつもの通り地面に這い蹲るように座って、隣で涼しい顔をしてタバコを吹かしている元旧友を見上げる。真面目なのか何なのか、一日きっかり二箱を消費し続けるその男は、まるで生まれて来た時からそれを口に咥えていたかのように、紫煙がよく似合った。

「ねぇシズちゃんさぁ」

喉の奥に血の混じった痰が絡む。それを行儀悪く吐き出しながら、男の嫌う呼称で彼を呼びつける。何故なら嫌だ嫌だと言いながらも、それを呼ぶことを俺に許す彼のやさしさを確かめたかったので。
案の定不機嫌に輪をかけた平和島静雄という名前の彼は、「なんだよ」とフィルターを噛み締めながら答えた。

「シズちゃん、タバコやめなよ」
「はぁ? テメェいつから嫌煙家になりやがった、ウジ蟲野郎」

彼と出会ってから、一度も言ったことのないその台詞が、彼は癇に障ったらしく(尤も彼の癇に障らない俺の言葉というのも思い出せないのだが)、すぱぁーと紫煙を吐き散らしながらいつもの悪態を地面に吐いた。かく言う俺も、一度もそれを口にしたことがない訳ではない。男同士の社会では、それを咥えているだけで進む話もある。そこは酒と同じことだが、ある時を境に俺はぱったりとタバコを吸うのを止めていた。

「ウジ……そうじゃなくてさ、俺シズちゃんより一分一秒でも長く生きようと思って」

そんな冗談にしか聞こえない本心を、詳らかにすると何故か静雄はバキリと指を鳴らして、先ほど収めた筈の殺気を、もう一度背後に背負い直す。

「天寿を全うする気か、良い度胸だな。
 一寸刻みにして殺してやるから、そこに直れ!」
「やーだよー」

俺はそんな彼の気配を察知するが早いか、漸く整いかけた息を深く吸い込んで、路地裏を全力で走り出す。当然その直ぐ後を、その辺の道端から拾い上げた看板を担いだ静雄が追いかけて来ているのを感じながら、俺は口元だけで小さく笑った。

(だからシズちゃん。君にも一分一秒でも長生きをして欲しいんだ。
そして俺と……)

ずっと終わらない、殺し合いをシよう?