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世界の終末で、蛇が見る夢。

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全てが一つであり、一つが全て、同じで異なる個体のたった一つが核として「餌(bait)」になり、やがて重ねた経験と記憶を織り上げ、「意思」と「個性」を持った。限りなく人間に近い存在となったが故に、排除されなければならなくなったとは、なんという皮肉。
女は笑いながら涙をこぼす、ちぐはぐな表情で言葉を繋ぐ。本当の涙なのか、組織が融けたものなのかは分からないけれど。
「ワタシを許シテ」というその一言を最後に、堰を切ったように全身の輪郭が崩れた。すぐに再生は始まったが、最後の力を使い果たしたのか、もはやその回復のスピードにさきほどまでの勢いはなかった。
「……馬鹿が。この人はもうお前など、お前達などとっくに許している。でなければ、こんなになってはいまい。…そういう人だからな」
忌々しげに吐き捨て、私は抱きあげた彼を片膝に乗せて頬をすり寄せる。死にそうに冷たい体。でもまだ生きている。死なせはしない。
「この人が許したとしても私は許さない。けして、決して許しはしない。この人を穢(けが)したお前なぞ、私のこの手で八つ裂きにしても気は済まない。だが…この人は、それを許さない。望まない。だから――だから、消えろ!」
顔を上げずに低く恫喝すると、目の前の気配は薄らいだ。
少し視線を上げると、大蛇(おろち)は現れたときと同じように、静かに床へ沈むところだった。上半分が再生された、美しい女の頭部だけが無造作に、子どもが振り回す水風船のようにでたらめに大きく揺れながら床面に飲み込まれていった。空間が一瞬水面のように揺れ、そして消えてゆく。
一つの痕跡も残さないままに「古き者」は去った。部屋には再び静寂が戻り、しかし夢ではない証に両腕の中には鵺野先生が残る。
放さない、誰にも、誰の手にも渡してなるものか。
自分でも驚くほどに強く強く湧き上がる感情に戸惑いながら、力を込めて彼を抱きしめていた。