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あさましくも僕はまだ、君を愛せずにいる

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窓の外では淑やかな雨が降り続いていた。ベッドから見える窓ガラスの黒に光る艶やかなネオンと、その平面を涙のように伝う雨粒が美しい。柔らかな枕に顔を押し当てていると、トランクスくんが話しかけてきた。

「痛むか?」

痛むか、だって。
「見れば分かるでしょ。」と返すと、彼は何を勘違いしたのやら、横たわっていた僕の上に被さった。

裸のままで眠るベッドはいつでも冷たい。上質なシーツの滑り具合と白さが更にそれを演出している気さえする。朝目覚めて、最初に目につく朝陽を浴びた一糸纏わぬ自分の姿は、なんだか浅ましくていやらしくてげんなりしてしまう。そしていつも隣に目線を送れば、穏やかに眠っているトランクスくんがいるのだ。それもまた僕の気を滅入らせる。まるでどこかの王子様みたいに気品漂う寝顔や、僕と同じく裸に近い姿なのに不思議といやらしさを感じさせず、それどころかどこか色気をかもし出すその姿に、僕はため息をつく。その朝さえなければ、或いはもう少しこの行為を好きになれるかもしれない。結局のところ、朝二人で裸のまま起きることが無くなるということは、この行為そのものが無くなるという式が成り立つので、それはまずありえないのだけれど。

そしてそんな僕の憂鬱を知らない彼は、今も暢気に僕の肌を弄っている。さっき一度したばかりで腰も下腹部も痛むと訴えたばかりなのに、心配しているかと思いきやこれだから困る。
昔、ブルマさんの前で「トランクスくんって時々ワガママだよね。」と言ったことがあったけれど、その時ブルマさんは声に出して笑うと、「仕方がないのよ。長いこと一人っ子だったから。」と僕にウインクをした。そういえばブルマさんも一人っ子で、若い頃は色々とすごかったらしいとトランクスくんから聞いた。もしかしたら自分の子供の頃と重なる部分があるのかもしれない。(ちなみにトランクスくんはその時僕に向かって「だったらお前はまだまだ甘ったれだよ。さすが末っ子だな。」と嫌味を言った。しかも笑顔で。彼はいじわるを言うのも上手い。)
…一人っ子だったことが原因かどうかは分からないけれど、とにかく今こうして体を痛めた僕を更に追い詰めようとしていることは確かだ。

「ねえ、僕の言った言葉の意味わかってないでしょ。」
「分かってる。」

分かってる、と言いつつトランクスくんはその手を止めようとしない。僕の体にかけてあるブランケットに手をかけて、それを剥がそうとしている。無言でその手を掴むと、もう片方の手でその手を掴まれた。僕があからさまに不機嫌な顔をしてみると、トランクスくんはまたあの意地の悪い笑みでにやりと笑う。

「見ろって言ったのはお前だぜ?」

言うのが早いかトランクスくんは僕にキスをして口を塞ぐ。反論しようとした矢先で僕はまだ口を動かそうと必死だったけれど、その間に彼の手が僕のものに触れて思わず体を震わせてしまう。その反応にトランクスくんが嬉しそうに目を細めたのを僕は見逃さなかった。

「…ん、やだ…。」

とりあえず唇が離れた時にすかさず自分の意見を口に出してはみたものの、その言葉は軽く流されてしまう。そして悲しいことにトランクスくんが僕の秘部に口を寄せる辺りからは、押し寄せる快楽に頭が回らなくなってしまうのも事実だった。そしてこれから先、僕はトランクスくんが「気持ちいいだろ。」と訊ねてくれば頷くのだろう。容易く想像出来てしまうのもまた悲しかった。

好きだなんだと言いながら、傷ついたところに再度トランクスくんが入ってくる。挿入される痛みに顔を歪めても多分トランクスくんは気づかない。お返しのつもりで思い切り彼の背中に爪を立てた。明日の朝にでも傷が痛めば良い。ベッドのスプリングが軋む音と、肌がぶつかる官能な音ばかりが響く。耳元で囁かれる愛の言葉に、僕は酔ってしまう。目を閉じて真っ白な世界にフェードアウト。遠くでトランクスくんと僕の呻くような喘ぎ声が同時に聞こえた瞬間、僕はまた明日の朝のことを考えて泣きたくなった。