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【腐】以心伝心ができれば【島国同盟】

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体にセメントを流し込まれたかのようだ。下半身が重く、冷たく、末端から感覚が無くなっていく。
おそるおそる足を見てみると、

「なんだこりゃ……。マシュマロみてーになってやがる……」

ピクト星人同様、それは白く凹凸の無いものとなっていたのだった。

敵母船から脱出し、海へダイブ。
別々に無人島に流れ着いたのにも関わらず、何とか無事に八人全員顔を揃えられたかと思ったのもつかの間。
突如として押し寄せてきた大量のピクト星人に囲まれ、一斉に襲われたのはつい先ほどの話。

相手は地球外生命体だが、こちらとて普通の人間ではない。国の化身として千と数百年生きてきた内に培ったカンと体術で、敵を蹴り、殴り……。
しかし一瞬の隙をつかれて、敵の攻撃をくらってしまったのである。
その結果がこのザマだ。

(くそっ……こんなことなら、でかいの一発召喚してやればよかった……)

冷たく、重い感覚は今や体半分を占拠し、徐々に上半身へ浸透してくる。
動けない自分の隣には、あのイマイマしい髭野郎がいて、やはり奴も攻撃を受けてしまったようだった。
白い筒状の腕を振り回しては「こんなの美しくない!」とわめいている。
いつもなら「テメーん所のタイヤ会社のマスコットキャラとお揃いになれてよかったじゃねーか」などと厭味の一つや二つ言ってやるのだが。
状況が状況なため、軽口を叩いている暇ではなかった。

武術の達人である中国や、アクロバティックな動きを得意とするアメリカ、あのロシアでさえピクト星人にやられてしまっているのだ。万事休す連合、である。

では、枢軸側はどうしているのだろうか。
ドイツは。あの特有の、威圧感のあるかけ声とともに、やや離れた場所で、ピクト星人が次々と宙に放り投げられていることからすると。どうやら、『隊長』は今も奮闘中らしい。
逆にあのマカロニ野郎の姿が見えないが、アイツはもともと戦闘力には入っていないから、いなかったとしても、支障はまずないだろう。


それでは、日本は。


イギリスは右へ左へと見回した。
すると、すぐに、異星人の間を縫うようにかけ巡り、刀に見立てているらしい木の棒を振り回している、ピクト星人とは違うまた別の白を発見したのだった。
「最近節々が弱ってきまして」とか「やはり昔のようには動けないものですね」と常日頃から漏らしている割には、無駄のない華麗な剣裁き。太刀筋が銀色の線となって、宙に軌道を描いているのかと錯覚してしまうぐらいだ。
非常事態にも関わらず、イギリスは、静かな闘志を燃やしている日本に見とれてしまった。
あぁ、普段の淑やかな菊もいいけど、こっちの勇猛な菊もたまらない。ソソるものがあるな、と。

……だなんて、無粋なことを考えていた罰があたったのだろうか。
イギリスが、自身の白い部分がとうとう首もとまで迫ってきたのに気がついたのと、菊がピクト星人の光線を受けたのはほぼ同時の出来事だった。

しりもちをつく極東の島国。
極西の島国は、白い我が身の重さに耐えかね、とうとう両膝を下り、砂浜につけたのだった。

日本の四肢が、じわじわと紙のように味気ない白に染まっていくのを、イギリスは指をくわえて(手と腕は既に同化してしまったが)みているしかなかった。
相手の元に近寄ろうにも、足が地面に縫いつけられたかのように動かない。

「日本ッ!」

かろうじて自由の利く腕を、百年来の想い人に向かって思い切り伸ばした。
目の前で、イギリスのよりも小振りな手が、ほどよく筋肉のついた二の腕が、みるみるうちにピクト星人のそれと同じ物になっていく。

「いや、だ……!」

イギリスの方の侵食は、とうとう首上までやってきた。
顔と口が一体化し声すら出せなくなる。ついで、鼻も無くなり息が出来なくなるかと思ったが、そこは宇宙人の体。
息苦しさを感じないところからすると、どうやら酸素を摂取しなくても、大丈夫な構造になっているようだ。

しかし、身体の重さは増すばかりである。
身体半分ピクト星人化した日本に向かって伸ばした腕も、重力に耐えかね、とうとう小刻みに震え始める始末。

(にほん……)

もはや、イギリスが自分の意志で動かせるのは、一対の瞳だけになってしまった。
彼は、じっと意中の日本一点を見据え続ける。
しかし、視界の隅が、うっすら白濁し始めたところからすると、目を自由に使える時間も、残りあとわずかなのだろう。

(に、ほ、ん……)

胸まで白に染まった東洋の国の化身。
ひとりぼっちだった自分の初めての友人。
もう失ってなるものかと強く願った、ただ一人の人物。

視界が、徐々に白に占拠されいく。どうやら、完全なピクト星人になりつつあるようだ。
伸ばしていた腕が、力無く地面に落ちる。続けざまに上半身も、砂浜の上に倒れたようだったが、不思議にも痛さを感じなかった。

(せめて、あともうちょっと)

(にほんをみていたかったな……)

目の前が完璧な白に染まる。
それと同時に、ぷっつりと、イギリスの意識が途切れたのだった。