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【銀魂】うつろ舟【土沖】

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 あの人はいつも窓の外を見ている。頼りない細い腕で頬杖をついて。

副長が行方知れずになったのは桜の季節だった。ちょっと出てくると行って外に行ったきりになった。部屋に刀は置きっぱなしだった。副長が帯刀しないなんて、初めてのことだった。
沖田さんは、何も云わなかった。取り乱すこともなかった。いつも通り飯を食って、ぶらぶらして。ただ、頬杖をつくようになった。あと、髪をのばしはじめた。


 あれは夏の明け方だった。廁にから戻ろうとしたら、沖田さんが見えた。その細さにぎょっとした。相変わらず頬杖をついていた。
「沖田さん…」
そっと声をかけるとちらとこちらを見た。
「副長、帰ってきませんねぇ」
俺は寝ぼけていたのかもしれない。よりによって沖田さんの前で云うなんて。
沖田さんにとって、何だかんだ云って副長は兄貴がわりだった。両親を亡くし、姉と二人ぽっちになった彼をなにかれと世話したのは局長と、副長だったそうだ。

「山崎ィ、」

少し乾いた、まだ子どもの声。不安定な若い声帯がゆれる。

「明日、髪を切ってくれよ」

じっとこちらを見つめた。母親譲りという女顔は、悲しいくらいに無表情だ。

「いいですよ。なんか今女の子みたいですもんね」

いつもなら女のようだという言葉に癇癪をおこすのだが、ひっそりと笑っただけだった。


彼は大人になりつつあった。

副長、どこに行ってしまったんですか?

沖田さんは勝手に大人になってますよ。


空が色をもちはじめる。俺は自室に戻った。