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【イザ子シズ】目隠し

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『どんなに遅くても10時までには寝ること』


母さんでもなく、父さんでもなく、幽でも無い
近所に住んでいるいざやとの約束だった。


いざやは近所に住んでいて、近くにある高校に通っている。
仲良くなったきっかけは何だろう、近所に住んでいるから?母親同士が自治会の集まりでよく喋っているから?
……思い出せないけれど、普通の人とは違う異常な力を持つおれの事を恐れずに
優しく接してくれた。

いざやは、おれにも幽にも優しかった。

優しくされるのが嬉しくて、好きだよって言ってくれるいざやが大好きで、
よく週末は臨也の家に泊まりに行っていた。







―たまには、いつもと違う事してみる?

にっこりと綺麗な顔で、楽しそうに、いざやはおれに笑いかけた。


いざやの家へ泊まりに来ても、いざやとの約束はしっかり守った。
本当はもっと遅くまで話していたいし、一緒にテレビ見たりゲームして遊んだりしたいけど
夜更かしばかりしていたら大きくなれないよ?といざやに言われているため、眠くなくても10時前には布団にはいって寝るようにしていた。
だから寝るまでの時間は無駄にしたくない、そう思っていたのに…
今日のいざやはずっと携帯やパソコンを弄ったり眺めたりしていてあまり構って貰えなかった。
構って欲しい、でも我が儘を言っていざやを困らせたりするのは嫌で、仕方なく一人でテレビを見ていたが
携帯を机に置いて、パソコンの電源を落としたいざやに
やっと構って貰える!と思ったときに、そう言われた。

いつもと違うことってなんだろう、と不思議そうな顔をしているおれに
いざやはもう一度「いつもと違うこと、試してみようよ」と言った。


いつもいざやとしている事と言えば、一緒にテレビ見たり、一緒にお風呂に入ったり。
けれど、もう既に実施済みでその他にいつもしている事と言われたら……



(え、えっち…くらい、しか…)




そう考えた瞬間、

「ふふっ顔真っ赤にしちゃって、可愛いなぁ」

いざやに言われた通り、自分でも真っ赤になっているかもしれないと思う程に
いざやとのえっちの時の事を思い出して、恥ずかしくて身体が熱くなった。


「い、いつもと違うことって…」

「うん、今日はちょっといつもと違う事をしてみようよ」


ね?と笑いかけられて、おれは頷くことしか出来なかった。




いつもと違うこと、と言ういざやに何をするんだろうとドキドキしていると
「はい、これ」と言って渡されたのは黒い布。

「?」

渡された黒い布を見て、どうするんだろう?と首をかしげていると
いざやは布を手にとって

おれの目を覆った。



「っい、いざや?」


急に真っ暗になり、何も見えなくて不安になる。
いざやの家で、いざやの部屋の、いざやのベッドの上に居る…はず。
それはわかっているし、近くにいざやも居るのはわかっているのに
視界を黒い布で閉ざされた、ただそれだけなのに急に不安になった。


「っぁ…」

「大丈夫、ちゃんとここに居るよ」


抱きしめられて耳元で聞こえるいざやの声に、少しだけ安心したけれど
何も見えないというのが不安で仕方がなかった。
側に居るのが、今自分を抱きしめているのがいざや以外である訳がないのに
本当にいざやなのだろうかと不安になって、何も見えないというのがこんなに恐ろしいものだと、思いもしなかった。

見えないままなのは不安だから、いざやの顔が見えないのが嫌だから。
布をとってもいい?と聞こうとした瞬間

「布はとっちゃダメだよ、いつもと違う事するんだから。ね?」

ダメだと先に言われてしまった。
いつもと違うことをすると言われて頷いてしまった以上、拒否することは出来ない。
もし嫌がって、拒否してしまえば今日はもう一緒に寝てくれないかもしれない


―もしかしたら嫌われてしまうかもしれない。


そう思うと拒否することなんて出来なかった。





作品名:【イザ子シズ】目隠し 作家名:とき