そういう立ち位置
何がどうなってこうなったんだ?
目の前には赤くなった目をこする佐久間とばつが悪そうに立ち尽くしている咲山。
そして、扉を勢いよく開けたはいいが、室内の雰囲気の気まずさにただ冷や汗を流している俺。
「…何やってんだよでこ…閉めろよ」
うわあ佐久間さん、そんな涙声で言わないで下さい。
泣きたいのはこっちだよ…。
ってちょ、咲山怖っ!
何でそんな殺気に満ちた視線を送ってくんだよ!!
「あ、あぁ悪ぃ」
後ろ手で扉を閉める。
「…」
無言。
いつもは和気藹々と他愛もない話をしているのに、無言。
お互い顔も合わせずに黙々と着替えている。
部活も終わり、源田や寺門は帰ってしまった。
不幸にも最後に残っているは俺達3人だけ。
どうやってこの重い空気を和らげようかと思案していると、鼻を啜る音がする事に気づいた。
佐久間の方からだ、とそちらを向く。
泣いてる。
女王様な佐久間が、静かに涙を流している。
声をかけようかと近づいた瞬間、咲山が佐久間を抱きしめた。
「さく、ごめん…怒ってねぇから…」
咲山の腕の中で両手で顔を覆い、嗚咽を洩らしている。
「っく、俺も、ごめん…っ」
咲山は少し屈んで佐久間の目線にあわせて、そのままキスをした。
あれっ…2人とも俺がいること忘れてない…?