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亮十

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みーん みーん みーん みんみん

島に生い茂る木々にはどうやらたくさんセミ達が繁殖してくれたようで、ひっきりなしに聞こえる音はブルー寮の(もっと言えばカイザーの部屋の前のたった一本の)木にも止まっていたらしい、目の前で鳴かれるのはなかなかうるさい。ほんとに、でも夏だなあとじんじん感じるのは嫌いじゃない。
俺は結構夏が好きだ。
「カイザー あつい」
下敷きをぶんぶん動かしながら、寝言みたいに云った。
「エアコンはちゃんと付けているぞ」
「設定温度が低いんだよ!もっと下げてくれ!」
「部屋一つでそうやって下げていたらブレーカーが落ちるかもしれない…それにエアコンばかりに頼るのも体に…」
「あーーーーもうッ かいざーのばか!」
ごろごろと布団の上で暴れると、カイザーの顔が少し曇るのが見えた。
八月のはじめ。今は夏休みで、アカデミアのみんなは実家に帰ったり旅行に出たりしている。けれどカイザーは色々忙しくて実家には帰らないみたいで、翔だけがおととい船に乗って家に帰ってしまった。「アニキをお願いします」という翔の皮肉ともとりづらい礼儀のいいお辞儀をカイザーの横で見ながら、まさに言葉通り。俺はそれからカイザーの部屋に泊っているのだ。なんせレッドにはエアコンがない。この真夏の灼熱の中あんな小さな部屋で生きていたら干乾びてしまってもおかしくないと喚いた俺に、カイザーは納得してくれた。元々カイザーの部屋に泊る事は何度かあったが、もう五日間は寝泊まりしていて…一緒に暮らしている気分を味わうのは、びっくりするくらい楽しかった。起きるのも、寝るのも、それこそ風呂に入るのも「一緒に入るか?」なんてふざけてからかう俺にほだされながら付き合ってくれるカイザーとの時間、今までそうやって生活の一部に彼を組み込む事なんて叶わなかったせいで、今まるで少しだけ未来を生きている様な気が感じられた。将来…もし彼が家に住んでいたら、こうやって出迎えて、喋って、ご飯を食べながら離す事が出来るのだ。
薄い夏用のシーツに顔を埋めながら、なんとなしにその未来を想像して、噛みしめる。黙り込んでいた俺にカイザーはほんとに暑がって気を落としたのかと思ったらしく。立ちあがって、徐に台所へと足を動かしていった。
「なに、何かあんのカイザー?」
「アイスを買ってある」
「マジで!やった!やったあ!」
すぐさまベットから足を飛びだしカイザーの後を追って冷蔵庫の扉を開ける背中に抱きついた。冷蔵庫から漏れる冷気も心地よくて、箱をだす音に気持ちがどんどん高まっていく。
扉を閉めて箱を綺麗に開けていきながら、カイザーの腰から顔を出してパッケージを覗く。
「俺チョコな!これ!チョコ食べたい」
「ああ、」
「カイザーは何味にすんの?」
「俺はいい」
「なんでさ、折角カイザーが買ったのに」
箱を冷蔵庫にしまおうとする動きをとめて、カイザーの首が少しだけ動いて、俺と眼を合わせた。
「お前が食べる為にかったんだ、」
当たり前みたいに言って、カイザーは扉をバタンと閉めた、手にある棒状のアイスをこちらに向けて、どうぞと言いたいみたいではあるが、それをよそに俺の胸の奥では熱が込み上げる。カイザー!アイスを通り抜けて絡みついて腰に頬を寄せた。暑い、けれどそれすらどうでもよくなるほど、幸せは頭の中で熱の様に余計なものを霞めさせた。前に回り込んで頭をあげる、少し驚いた顔が俺のほうを見て、ぱちりと目蓋を動かしている。
「アイスが溶けてしまう」
「うん、わかってる。けど好き、カイザー好き…!」
すりすりと頬を寄せて何度も何度も、溢れんばかりに言うと、カイザーの手が頭に触れた、優しく撫でて俺は頭をあげる、爪先で背を伸ばして、カイザーとキスをする。ちゅう、なんて吸いつくカイザーの唇もあったかい。少しカイザーの手が動いたと同時に頭を離してその手にあるアイスを取る。足取りよく歩いて、カイザーから離れた。
「アイス溶けちゃうもんな!」
少し戸惑った様な顔をしたカイザーににやりと笑いながら、ベットに戻って勢いよくその棒の先端にむしゃぶりついた。冷たいアイスは肌にぴとりと張り付いて気持ちいい、先端から吸い上げて、熱でとろけていく液体を啜る。ちゅうちゅうと音をたてて咽喉を通る冷たい味に足をぶらぶらとゆらめかせていると。カイザーが歩いてきた。俺は迷わず右手で自分の隣を何度か叩く、カイザーが俺の希望通り隣に座ってくれたので、俺は見上げてにこりと笑った。ちゅぱっと離れるアイスはつやつやしてて、額に流れる汗の様につう、と垂れていく。
「うまい!」
「そうか、よかった」
「一口食べるか?」
差しだした先端を瞳が追って、カイザーはこちらを見た。元々かわからないけど、顔は少しだけ赤い。そう思っていればすぐアイスはとろりと溶けてきてしまったので、俺は舌先でそれを舐めあげた。カイザーが顔を逸らしたのをみて。ああ、と漏らす。
「カイザー、やらしいこと考えてんだな」
小さく笑いながら言うと、カイザーは顔を抑えて膝に肘をつけた。屈んで、横目でこちらを見ながら口を開く。
「いや……十代、…そのだな…」
「カイザーのえっちー」
またぱくりとアイスを咥えて、隣のカイザーの腕に手を回す。こうやって泊る事が出来るようになってから、所謂肉体の関係とやらをカイザーにはすでに教えられているので、俺はカイザーが顔を赤くしてそちらの事を考えている事に、なんとなく気付ける様になった。カイザーが以外とむっつりしてて、言葉に出さなかっただけでそういう事が好き(て言うとそういう事じゃない!ってカイザーは怒るのだけど)――そういう事をちゃんと思っているという事。もちろん俺もカイザーがそう思っているのは嬉しかった。嬉しいなんて表現はよくないらしいけど、カイザーに触られるのが好きなので、どうしようもない。
思うたびに、変な好奇心が襲い、胸を突く。恨めしく目を逸らすカイザーがなんとなくかわいく思えて、口からアイスをずるりと出した。
「なあ、アイスたくさん買ったのもえっちな事考えてか?」
「そんなわけないだろう」
「ほんと?アイスでえっちな事したいとか思ってない?」
「思っている訳ないだろう…」
頭を抱えて項垂れている姿に、俺はふふと笑ってこっちを見てと言った。ちらりと動く瞳を見つめて、アイスをまた咥える。
「んむッ…」
「十代、お前な…」
「んっ…ぁむ、…だってさ、暇なんだし、」
「アイスを食べてればいいだろう」
「やだーカイザーに触りたい」
ちゅうとアイスに口付ながら言うと、カイザーはまた眉をひそめて赤い顔をした。ちょっとだけドキドキしてるその顔は、あと一歩、って感じで、俺は最後の押しに入る。
「ね、えっちしよ?」
ちゅるっと先端を弾かせて出したアイスを、カイザーの唇にぴとってあてた、上目でにこにこ笑いながら言っていると、カイザーの唇が開いて、赤い舌先がアイスを舐めた。少し真面目な顔をしてするそれがやらしくて、俺はまたクスリと笑った。












ヴァニラ・キッス


作品名:亮十 作家名:梨比