捻挫
何もない所で転んでしまった。
それだけでも恥ずかしいのに、それを利劔様に見られてしまった。
恥ずかしくて、その場から立ち去ろうと立ち上がると、足を捻ったようで痛みが走った。
「ッ…!」
痛みで立ち上がれずに、足を抑えて、しゃがむと利劔様が駆け寄ってきた。
「大丈夫か?」
駆け寄ってくれた利劔様は私に手を差し伸ばしてくれた。
私は、その手を取ろうか躊躇していると
「あの…」
「立てないのか?」
「あ、いえ…その……」
私が言葉を濁していると、利劔様は失礼と一言言って私の身体を抱き上げる。
「あ、の、…重いですし、下ろしてください」
「心配しなくても、お前は軽い。」
「そういう事ではなく…」
利劔様から伝わってくる私を心配してくださる思いが、心苦しく感じるのだ。
だたの私のドジで足を捻ってしまっただけというのに…。
「一人で歩けるので」
「その足でか?」
「え?」
「足を捻ったのだろう?」
「…はい」
私が頷くと利劔様は救急箱のある部屋まで連れて行ってくれた。
私を椅子の上に下ろすときも気遣うように、そっと下ろしてくれた。
私を座らせると、膝をついて私の足を診ながら
「軽い捻挫だな」
そう言って、手早く処置をしてくれた。
処置をしてくれる間も感じる利劔様の思いに私は申し訳ない気持ちと、嬉しい気持ちを同時に抱いた。
「ありがとうございます」
処置が終わり、お礼を言うと利劔様は気をつけるようにっと注意された。
その言葉を嬉しく感じる私は現金なのだろうか。
捻挫
END