きれいなものはどこにもなかった
天使を犯してはならない。天使を壊してはならない。天使を塗れさせてはいけない。天使を穢してはならない。天使を対象としてはならない。天使を暴いてはならない。
天使は、美しく清浄なものでなければならないからだ。
瞳をあかくしてよかった
「これは私も気に入っている。君にしてはいい選択だと思うよ」
ただ、もっともっとあかくあかくしてみたい
「これ以上は無理だ」
……天使も、切れば血が出るだろうか
「出ないようにつくったのは君だろう?」
肉を抉った先には臓物があるだろうか
「ないようにつくったのは君だ」
つくろうか
「今さら人間の真似なんてできないよ」
私は絶対なのだろう?
「絶対といえども、完成してしまったものはどうにもできない」
どうとでもなる
「やめたほうがいい。私は君から与えられたこの身体が好きだし、君も好きだと言ってくれるじゃあないか」
気が変わったんだ
「……変わることは、恐ろしいな」
恐ろしくなどない
「このままがいい」
そう口にしては変えられてきたくせに
「君だからだ」
では、変えても?
「……君にとって、一番いいようにしてくれ」
白いものを黒く、黒いものをあかくしろくあかくあかくあかくあかくあかくあかくしろくあかくあかくあかくして。
天使は、とうの昔に天使などではなくなってしまっていた
作品名:きれいなものはどこにもなかった 作家名:みしま