二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

どうしようもなく卑怯

INDEX|1ページ/1ページ|

 
彼はいつも、自分に知らないことなどない、といった顔をしている。それがたとえはったりであったとしても、彼は余裕のある顔を崩さない。
 それが時に相手を苛立たせ、焦らせ、終いにはそんな隙をついて相手を陥落させる。
 ――彼の常套手段だ。
 わかっていても、ひっかかってしまう、その巧妙さが憎らしい。



「あなたは卑怯な人です」
「知ってるよ」
「そして酷い人だ」
どれだけ罵ろうとも、薄く浮かべた笑いを崩さない。それが悔しくて、どうしようもできない自分が情けなくて、ぎりっと奥歯を噛んだ。
「本当は、知らないんでしょう」
「どうかな。俺は情報屋だよ」
その余裕のある顔を崩してやりたい、と思う。しかし、自分では役不足だということも、痛いほどわかっている。
 悔しい。
 彼の一向に崩れない表情に、焦りを覚える。だが、それこそ彼の思うつぼだ。冷静になれ、と自分に必死に言い聞かせる。
 でも、それも彼の一言で一瞬で瓦解してしまうのだ。
「俺のこと、好きだよね。帝人くん」
「……っ」
動揺が顔に浮かんでしまっていることだろう。一層深くなった彼の笑みで、そのことを悟る。
 慌てて、彼の視線から隠れるように俯くが、すぐに顔を上げさせられてしまう。
 両頬を挟んだ手は、冷たかった。それなのに、触れられたそこは酷く熱い気がした。
 その熱に、指先が震える。
「……っ。知りませんっ。離してください!」
振り払おうとした手を、ぱしりと取られた。触らないでほしい。
 震えが、伝わってしまう。

「帝人くん」
 
名前を呼ばれて、心臓が跳ねる。一瞬抵抗が止んだ隙に、両手を壁に押し付けられてしまう。

「帝人くん」

名前を呼ばないで。触らないで。折角隠してきたのに。
 無闇に暴こうとする彼が、憎くて、それでも――


 自分の気持ちを言うつもりもないのに、僕にばかり言わせようとする。このどうしようなく卑怯で、酷い人の言葉を、否定できない僕が悔しい。
 全部知ったような顔をして。それでも言葉を欲しがるこの人が。 
 

 僕は、好きで好きでどうしようもないのだ。
作品名:どうしようもなく卑怯 作家名:コウジ