20080915ペーパー小ネタ
カップを二つ手にしたスクアーロがXANXUSの前まで来てそう問うた。書類に目を通していたXANXUSはちらりとそちらを見やると無言で片手を伸ばす。
スクアーロはその手にカップを持たせると、執務机の端にもたれ掛かり、XANXUSの見ているそれを覗き込んだ。
「次の任務かぁ?」
「覗くな、うぜぇ」
身体を傾けたスクアーロの髪が書面の上に垂れ下がり、視界を塞がれてXANXUSはそれを払いのける。
「 あ゛ー、悪ぃ」
それに気づいたスクアーロはカップを机上に置き、片手で髪をかき上げて改めてそれを覗き込んだ。
「誰に回すんだぁ?」
興味津々、と言う風にスクアーロはXANXUSに問う。その声の響きに気付き、XANXUSはスクアーロを見上げた。
「何だ、てめーが行きてーのか?」
「んー、最近デスクワークばっかだしなぁ」
一通り目を通して満足したのか、スクアーロは机にもたれたまま置いたカップを手にとって口に運ぶ。
「てめーは一週間後のボンゴリアンパーティの護衛だ」
「はぁ!?」
突然のそれにスクアーロは思わずXANXUSを振り返った。
「そんなこと全然言ってなかったじゃねーかぁ! 誰の護衛だぁ?」
「オレだ」
間髪入れずに返った返答にスクアーロは目を見開く。XANXUSはその視線を受け止めながら気怠そうに頬杖をついた。
「また代理でも頼まれたかぁ?」
「めんどくせー事にな」
そう言って大きく溜息をつくXANXUSにスクアーロの手が伸びる。前髪を軽く指先でかき上げられ、そのまま頭を撫でるように手を動かされ、XANXUSは視線だけをスクアーロに向けた。
「何やってやがる」
「……いたわってやろうかと」
スクアーロのその言葉にXANXUSは思わず吹き出す。
「何だそりゃ。てめーごときにオレがいたわれるとでも思ってんのか」
「思ってんぜぇ?」
にやりと笑い、スクアーロは身体を傾けXANXUSの額に唇を落とした。XANXUSの手が伸びてスクアーロの持つカップを奪い、脇に押しのける。スクアーロの唇がXANXUSの鼻筋を通り、肉厚の唇に辿り着いた。
小さく音を立てて唇同士が触れ、すぐに離れる。それを追ったXANXUSの唇がスクアーロのそれに触れ、先程より僅かに深く、唇が重なり合った。
スクアーロの手がXANXUSの肩に回り、その身を引き寄せる。XANXUSの手は目の前の銀の髪を掴み、自身の方に引いていた。
「いい加減髪引っ張るのやめねーかぁ? 毎度の事ながら、結構痛ぇんだぜぇ」
唇を離しながらぼやいたスクアーロに構わず、XANXUSは握っていた髪を更に強く引く。頭皮を引かれる痛みにスクアーロは顔をしかめ、溜息をついてXANXUSの頭に両腕を回すとそのまま抱き寄せた。
XANXUSの額がスクアーロの胸に押しつけられる。暫く言葉を発することもなくそのままでいた二人だったが、スクアーロに抱き寄せられていたXANXUSがぽつりと呟いた言葉に沈黙が破られる。
「めんどくせーな」
「サボっちまえ」
即座に返ってきた返答に、XANXUSは笑う。それからスクアーロの背に腕を回し、その身体を引き寄せた。
作品名:20080915ペーパー小ネタ 作家名:あや