20081229ペーパー小ネタ
実際そのようなことを口に出せば実力行使に及ばれるだけなことはわかりきっているのでスクアーロも表だって言いはしないが、XANXUSもスクアーロに髪を触れられる事を嫌がってはいないようである。それどころかややもすればスクアーロに髪を触られて心地よさそうに表情をゆるめるXANXUSが見られたりもする。
それが無自覚であるからたちが悪いのだとスクアーロは常々思う。スクアーロがXANXUSに触れたがっているのも、XANXUSがスクアーロに触れられたがっているのも、二人の間では周知の事実だ。だからスクアーロは何も言わずともXANXUSに触れようとするし、XANXUSもまた同様である。
二人きりであるならばどれだけ和らいだ表情を見せようとも構いはしない。それどころか歓迎したいぐらいだとスクアーロは思う。しかし周りに他者がいるのであれば話は別だ。私情は抜きにしてもそのようなヴァリアーのボスの姿は表に見せたいものでは無い。
三十を超える頃になってからXANXUSはスクアーロに対して以前よりも素直になってきていた。横暴な態度や部下に対する暴力などに変わりはないが、スクアーロに触れたいときは触れたいと、素直に言うようになった。
今もこうしてソファに座るスクアーロの腿に頭を載せ寝転がっているのはXANXUSの希望によるものだ。スクアーロの指先は柔らかくXANXUSの髪を撫で、XANXUSは目を閉じてその感覚を受け入れている。
普段の我が儘に比べれば非常に些細なものではあるが、これだとて他の人間にあまり見せたい姿ではない。XANXUSの腕がさりげなくスクアーロの腰に回り、その身体を抱きしめていると言うよりは抱きついているような形になっているのもそれをいや増している。
スクアーロ自身そうされることは嬉しいのだ。誰も信用しようとしなかったXANXUSが徐々に心を開き、スクアーロにはくつろいだ姿を見せる。独占欲というよりは、そうできるようになったXANXUSを喜んでいると言う方がより近い感情だ。
その分我が儘も度を超したものが増えてくるようになったが、甘えられていると思えばそう悪いものでもない。あまりの理不尽さに苛立ちを感じることも無くもないが、我が儘を言えなかった過去を知っている分、スクアーロには何も言えることは無かった。
「寝てんのかぁ? XANXUS」
あまりに動かないXANXUSにふと疑問を感じ、スクアーロは声をかける。低く唸るような返事が返ってきたことから察するに、うとうととしかけていたのだろう。スクアーロの腰に巻き付くXANXUSの腕に力がこもり、XANXUSの額がスクアーロの腹に押しつけられる。
「悪い。仕事何もねーなら寝てていーぜぇ」
あまりに不満そうな態度にスクアーロは思わず謝り、謝罪の意味を込めてその髪を指で梳くとすぐにXANXUSの身体から力が抜け、スクアーロに体重を預けてきた。
スクアーロはそれを感じて口の端に笑みを浮かべると眠りを促すようにそっと、その髪を撫で続けた。
作品名:20081229ペーパー小ネタ 作家名:あや