20090315ペーパー小ネタ
轟音にも似た大声と共にスクアーロはXANXUSの執務室を訪れる。時間的にもタイミング的にもそろそろだろうと思っていたXANXUSは、普段であればグラスを投げつけるところであるが今日ばかりはそうはしなかった。
「ベスター」
机の上に組んだ足を載せ、手にしたグラスを緩く揺らしながら側に控えていた己の匣兵器の名を呼ぶ。呼ばれた白い獣はゆっくりと立ち上がると扉の方へと歩いていった。
勢いよく扉を開けたスクアーロはそのままの勢いで部屋に入りかけ、目の前に立ちはだかるベスターの姿に足を止める。
「 う゛ぉ、何だぁ出迎えかぁ? あ あ゛ ぁ゛!?」
いつものようにそのたてがみを撫でてやろうと手を伸ばしたスクアーロは、突然後足だけで立ち上がりのし掛かってきたベスターに動揺の声を上げた。大きな獣の前足がスクアーロの両肩を捕らえ、べろりと大きな舌で顔を舐められると共に体重をかけられてスクアーロはその重さに耐えきれず、そのまま床に後頭部から倒れ込む。
ごつ、と景気よく響いた鈍い音を合図にしたかのようにXANXUSは立ち上がり、スクアーロの元へと向かった。
「 い゛っ……てぇ ぇ゛ え゛!!」
「うるせーぞ、カスザメ」
ベスターに押し倒された形になっているスクアーロの横に立ち、XANXUSは涙目になっている己の部下を見下ろす。
「何やってやがんだ」
そう問うXANXUSの表情には隠しきれぬ笑みが滲み、それを見たスクアーロはこれがXANXUSのけしかけた結果であることを察した。
「そりゃこっちの台詞だぁ!」
ベスターに乗り上げられている為、身を起こすことの出来ないスクアーロは床に寝転がったままで喚き立てる。
「うるせぇな」
一言呟くように言ったXANXUSは尚も喚き続けるスクアーロを無視してその場に座り込むとベスターの身体に手をかけてスクアーロを覗き込んだ。
「な、んだぁ?」
唐突なXANXUSの行動にスクアーロは一瞬怯んだような表情を浮かべ、XANXUSに問う。
「ベスターも祝いたいんだとよ」
ベスターにもたれ掛かりながらスクアーロを見下ろして、XANXUSはそう言う。XANXUSの手はベスターの身体に置かれたまま、XANXUSの身体が傾いて少しずつスクアーロに顔を寄せていく。
「祝うだぁ?」
「仕方ねぇから、オレも祝ってやる」
そう言って頭を沈み込ませたXANXUSの唇がスクアーロのそれを覆い、塞いだ。それを受け止めながらスクアーロはXANXUSの言葉を反芻し、ようやく今日が何の日かを思い出す。
「意味わかんねーことすんなぁ……普通に言えば済むことだろうが」
離れていったXANXUSの唇を視線で追いながら、スクアーロは不満げに言った。スクアーロのその言葉を受け、XANXUSは楽しげに笑う。
まっすぐに目を見つめながら祝いの言葉を告げられ、スクアーロの表情が面映ゆげに笑みこぼれた。
作品名:20090315ペーパー小ネタ 作家名:あや