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20091230ペーパー小ネタ

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XANXUSは以前と比べていい意味で己の感情を顔に出すことが増えた。特に笑顔を浮かべる機会が格段に増えており、それは妙に屈折している訳でもなく楽しいと思えば笑い、つまらないと思えば顔をしかめる。そのことが周囲にどれだけ影響を及ぼしているのか、知らぬは本人ばかりなりだろう。年月を経て成熟した男の雰囲気をまとうようになってからは尚更、XANXUSの浮かべるその表情の一つ一つに魅了される人間が増えていっている。
 とは言え、ヴァリアー内ではXANXUSは今だ己の気に食わないことがあれば言葉よりも先に暴力に訴える、恐怖の対象であることもまた事実である。それなりの地位に就いているならまだしも、入隊したばかりの下位の隊員達などは入隊時の目通し以外まともにXANXUSを見る機会にもそうそう恵まれない筈であるが、その横暴な彼らのボスに関する噂は常にヴァリアーの内部を飛び交っていた。
 殆どの隊員達は彼らのボスの不機嫌な姿しか見たことはないだろう。それはXANXUSの機嫌がいいときというのが、ごく限られた範囲内にしか存在しないことに起因する。
 一つはXANXUSが彼自身の手で己の敵を排除するとき。滅多に無い実戦はXANXUSの気分をこの上なく昂揚させ、凄味を滲ませたその笑みは男女を問わず彼を崇拝する全ての人間を魅了してやまない。
 もう一つは、戦闘時以上にごく限られた人間しか知らない限られた状況だ。XANXUSは彼の匣兵器であるベスターを己の武器であると言う以上に信頼し、側に置いている。そのベスターと共に休日を過ごすとき、XANXUSは普段の暴君の姿を脱ぎ捨て落ち着いた穏やかな時を過ごしている。その姿を知っているのは、休日でもXANXUSへの訪問を許されている幹部達しかいない。しかし幹部達も決してXANXUSの休日を邪魔したいと思っている訳ではないため、余程のことがない限りは出来るだけ、主への休日の訪問を避けていた。
 しかしそれが周囲への建前だと言うことを知っているのは隠された真実を知る幹部達本人だけだ。実際XANXUSがベスターとくつろいだ休日を過ごしているのは確かだが、XANXUSはベスターとだけ休日を過ごしている訳ではない。彼の側には常にスクアーロの姿がある。
 XANXUSはスクアーロにだけは気を許している。本人も認めがたい事実のようであるが、それは事実だ。スクアーロの存在があることでXANXUSは心にゆとりを持てている。喧しい男だと追い出すのは容易いが、XANXUSがそれをしないのは無意識にもそれを自覚しているからだろう。
 人肌の温もりをXANXUSに教えたのはスクアーロだ。抱きしめ合うことの安らぎを、触れあうことの心地よさを学ばせたスクアーロと、いつしかXANXUSは身体を重ねる関係となっている。どちらかと言えば淡泊な方であるスクアーロを求めずにいられないXANXUSは、自分ばかりが求めているように思えて仕方が無い。求めれば求めるだけ返される。そのスクアーロの表情に陰ったものはない。時にはスクアーロから求められることもあるからきっと悪い関係ではないのだろうと思ってはいるのだが、スクアーロの本心はXANXUSには今だよく見えず、確信は持てない。
 ベスターとくつろいでいるXANXUSを見るのがスクアーロは好きなようだ。XANXUSがベスターに表情を和らげて接していると、いつしかスクアーロに見られている。視線を返せば気にするなと言われ、それに機嫌を損ねれば笑っている顔を見ていたいのだと返される。XANXUSに笑っている自覚は無かったのだが、XANXUSを見るスクアーロの表情がそれを裏付けていると言わざるを得ない。ベスターと戯れるXANXUSを見るスクアーロの目は、普段からは考えられぬほどに柔らかい光を浮かべている。XANXUSはスクアーロに気づかれぬようにそれを伺うのが好きだった。普段の鋭い光を宿した強い眼差しにも惹かれるが、慈しみにも似たその緩やかな視線を全身に感じるのもこの上なく心地がよい。
 だから今日もXANXUSは、スクアーロに笑顔を見せるのだ。彼自身はそうとは意図せず、しかし求めるそれを得る為に、無意識に、意識的に。
作品名:20091230ペーパー小ネタ 作家名:あや