すべてはボスの名の下に2
少し大股で歩き、ぽんと肩を叩く。
すると、青年はすでに己の後ろに誰がいたのか分かっていたのであろう笑みを浮かべながら振り返った。
四木はそんな青年に内心ほくそ笑む。けれど表面はいつもの変わらない食えない笑みを浮かべていた。
「これはこれは帝人君、もう様態はよろしんで?」
「これは四木の旦那さん。はい、その節はどうもお世話になりまして・・・」
帝人は頬を掻きながら、へにゃりと眉を八の字にして四木に頭を下げた。
四木はあのときの事を思い出し、笑みを深くする。
「なに、かまいやしません。それに私はここの門外顧問です。ここでのいざこざを粛正するのが私の役目ですから」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
四木はそっと帝人を導き、歩みを促す。帝人も四木と同じ歩調で歩き出した。
「それで、今日はどういったご用件で?」
「なに、帝さんに頼まれた資料をちょいっと持ってきたまでで」
四木は手で持っていた資料を帝人に渡そうとする。けれど帝人はその資料を手で制した。そして苦笑混じりに告げる。
「いけませんよ、四木の旦那さん。僕はここでは一様部外者。そうそうそう言う資料を見せてはいけません」
「おや、これは失敬しました」
「いいえ・・・。こういう線引きは大切ですから」
帝人は笑みに影を落としたが、すぐさまいつもの朗らかな笑みを浮かべた。
四木はそんな帝人に目を細め、資料を持っていない手を伸ばす。
「帝人く、」
けれどその手は帝人に届くことはなかった。
突然帝人と四木にアタックしてくる存在の所為で。
「っと!?」
「っ、おやおや・・・」
片方は驚きの声を、もう片方は呆れた苦笑混じりの声を上げた。
「もう!二人して遅いですよ!」
二人に突撃してきたのは帝人の妹であり、このマフィアを取り締まる帝。
帝はすぐさま二人の間に入り、両方の腕に自分の腕を絡めさせた。
「帝・・・驚かさないでよ~」
帝人はため息をつくと、しょうがないという笑みを浮かべて妹の頭を撫でた。
「だって兄さん達が遅いのよ?私ずっと待ってたんです!四木さんも遅い!」
きっとにらんでくる少女のような女性の視線に四木は心からの笑みを浮かべた。
「お嬢を待たせるなんてそりゃぁすみません。以後気をつけます」
「ふふ!そうしてくれると助かります」
三人は世間話をしながら、長いようで短い廊下を歩いていった。
ちなみにそれをうらやましそうに見ている人物が柱の陰にいることは、もちろん帝人を初め帝、四木も気がついていた。
しかし、あえてそれを無視して談笑をしていたのは暗にその隠れている人物が面倒だというと事を知っていたからである。
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なんで帝ちゃんにあぁ抱きつかれるのさ!俺一度もそんな美味しいプレイされたことない!
・・・うわぁ嫌だなぁ、プレイとか本当にやめてくださいよ気持ち悪い。
・・・うるさいね餓鬼。お前だって『死ねこのエロ親父』とか言いながら爪かんでたじゃん!
なっ!?うっさいですよこの年増!
はぁ!?乳臭い餓鬼はとっととままのお膝で寝てきなよ!
・・・誰が乳臭い餓鬼だ、しばくぞ・・・
やれるものならやってみれば?M葉くん?
はっ!そっくりそのままお返ししますよ、うざ也さん
・・・外野がうるさいですね、止めますかお二人とも?
四木さん、アレをいちいち気にしていたらそのうち円形脱毛症になってしまいますよ。
ふふ、あのどうでもいい人達は放っておいてお茶にでもしませんか?
それはいい。どうです四木の旦那さん、お茶をご一緒してもらってもいいでしょうか?
私で良ければ。
決まりね!
作品名:すべてはボスの名の下に2 作家名:霜月(しー)