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まさきあやか
まさきあやか
novelistID. 8259
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暴力なの腹黒なのどっちなの? / リボーン

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ドン・ボンゴレこと沢田綱吉には7人の守護者がいる。それは有名な話だ。最強と言われ、一人ひとりが千の兵にも勝ると言われている守護者たち。
 だがそれと同時に、ドン・ボンゴレにとって頭痛の種の一つである事は、意外と知られていなかった。

「あぁもう!隼人も山本もいい加減にして!!」

 日ごろ、温厚だ平和主義だと自称し、周囲には臆病者だ、脆弱だと謗られる事の多い綱吉が、吐き捨てるようにして声を荒げることは非常に珍しい。
 常に、気弱な笑みを浮かべて、暴走する守護者をなだめているのがごく一般的であり、ファミリー達の中でも見慣れた姿であった。
 しかし、いくら温厚な人間だろうと、毎日のように執務室を爆破されたり重要書類を切断されたりすれば苦情の一つや二つ出て来るだろう。

「ツナ!」
「十代目!」

 すがるような二人の眼差しと声を、綱吉はバッサリと切り捨てる。いつもならそれでほだされてしまうだけにやはりこれも珍しい。

「大体隼人は気が短すぎるんだよ!山本は無造作にそれを煽るし!!」

 ―――そんなんだからオレの守護者達は「できれば部下にしたくないランキング」の上位独占状態とか言われるんだよ!

 どうやら綱吉の弟分でもあり、星の王子様と言われる凄腕情報やが、またマニアックなランキングを取ったらしい。
 ちなみにアルコバレーノやヴァリアー幹部も上位にいるので、綱吉の周囲はそんな連中ばかりとも言えるだろう。

「いい加減いい年した大人なんだから、人並みの自制心とかを養ってくれよ!」

 ハァハァと、肩で息をつきながら綱吉はそう叫ぶ。そして、何とも言えない表情を浮かべている右腕と親友に、大きく息を吐くことで呼吸を整え一言告げた。

「二人に今後一切の武力行使を禁じる。自分の命に危険が迫った場合のみ反撃を許す。ただし、その場合でも周囲に被害を与えないことを最優先にすること」

 そもそも二人は綱吉の守護者ではあるが、幹部でもあるのだ。抗争でいの一番に突っ走ることがそもそもおかしい。いい加減部下を使うのを覚えさせろとリボーンにも言われているのでいい機会だろう。

「守れなかったら嵐の守護者はベル、雨はスクアーロと交代だ!」
「十代目ぇぇぇぇぇ~」
「あちゃ~」

 綱吉の叫びに、獄寺の情けない声と山本の何とも言えない声が重なる。ついでに出て行けと執務室と追い出された二人。獄寺はオイオイと嘆きながら締め出されたドアに縋りつき、山本は頭痛を抑えるように頭を押さえてため息をつく。

「さすがに今回はまずかったのなー」
「十代目ぇ…十代目ぇ……」

 カリカリカリと、嘆く獄寺がドアをひっかく音が妙に物悲しい。しかし、綱吉は一度こうと決めたらそれを貫き通す頑固さがある。そうでなければあのアルコバレーノの教育を受けて今だダメツナだと自分を笑えるわけがない。

「腹くくろーぜ、獄寺」
「十代目ぇぇぇぇ……」

 決して開かぬドアを前に、獄寺は山本の言葉にコクリと頷いた。その日から山本と獄寺にとって、そして何より彼らの部下にとって地獄のような日々が始まったのである。





「何やらおもしれーことをやってるな」
「は?」

 ある日、ふらりと本部にやって来た男、綱吉の義兄でありヴァリアーのボスでもあるザンザスがソファにふんぞり返りながらそう告げた。綱吉は彼が持ってきた書類に目を通しながら首をかしげる。
 めったにヴァリアーの本部から出てこない彼が、大して急ぎでもない書類を持ってきたと思えばどうやらそれが目的だったらしい。

「なんのこと?」
「雨と嵐だ。マテはいつまでもつんだ?」
「……あぁ」

 嘲笑うような、面白がる色を隠さないザンザスに、綱吉はため息をつく。すぐに耐えきれなくなると思っていた二人だが、すでに半月以上大きな混乱は起きていない。
 今回は山本と獄寺だけだったのだが、二人の一件を聞いたのか、他の守護者達もおとなしいのは嬉しい誤算だろう。

「ベルもスクアーロもザンザスの部下なんだから、簡単に取り換えられるわけないだろうに」
「ハッ!」

 守護者が綱吉達を慕っているように、ヴァリアーの幹部はザンザスに心酔している。いくら綱吉がボンゴレのボスだからと言って、簡単に入れ替えることなどできはしないだろう。

「まぁ、貸してやってもいいがな」
「その時はよろしく」

 軽い口調で言うザンザスに、綱吉もそう言って肩をすくめる。そうしてザンザスが持ち込んだ書類にサインを入れると、突き返した。
 そう、今のところ守護者の誰も、大きな騒動も損害も出していない。しかし綱吉はこのごすぐ後に、自分が出した禁止令を撤回することになるのだ。

「ツナ、この前こっちに手を出したファミリーのボスなんだけどさ、パンツいっちょにしてミラノの裏通りに放り込んでおいたぜ?」
「え、ちょ」

 そこって確かいわゆるそっちの趣味の――日本で言うところの新宿二丁目的な――場所だよね?!と、言う綱吉の突っ込みは、山本のさわやか過ぎる笑みの前に沈黙した。

「そうそう、十代目に暴言を吐いたリッツですが、とりあえず、全裸に剥いてトレビの泉に縛りつけておきました」

 なに訪れる観光客にトラウマ植え付けるようなことしてるの!?と、ニカッとした笑みで告げられた言葉に、綱吉はペンを取り落とした。
 リッツとは先日、獄寺と共に訪れた会合で綱吉が日本人であることや年若い事を下に見て、ちょっとした嫌みを言ってきたのだ。
 綱吉にしてみれば大した問題でもなく、いつもなら即座に噛みつく獄寺も綱吉のいいつけが身についていたのか大した反応を見せていなかった。

「ふ、二人とも?」
「武力行使はしてませんからご安心ください十代目」
「そうなのなー。周囲に協力してもらってるし、大丈夫だぜ、ツナ」

 結構それも楽しいのなー。と、笑う山本に、綱吉はガクリと肩を落とした。

「……ツナ、部下から苦情が来てるぞ。命の危険よりも精神の危険の方が嫌だとよ」
「あんな二人に誰がしたの!!」

 さめざめと嘆く教え子に、「あいつらはもとからあんなんだ」と言う言葉は告げる事は出来ないリボーンだった。