ポッキーゲーム
それを受けたのは沙樹。
事の始まりは数分前のことだった。
「なあ沙樹。これ、やってみない?」
「これ?」
手に持ったものを指差し、正臣はにこやかにそんな提案をした。
指の先にあったのは有名なチョコレートのお菓子。
そして、それを使ってやるものと言えば一つしか想像できなかった。
「端と端を咥えて、どんどん近付いてくあれ。やってみない?」
今度はより具体的に正臣は提案する。
その言葉に少し思案した様子を見せ、沙樹はこくりと頷いた。
「いいよ」
「マジで?」
「うん」
そんなやり取りの後、現在に至る。
言いだしたものの、いざやろうとなると照れが先行してしまう。
沙樹はそういった感情を抱いていないのか、平然とした様子で目を閉じている。
「沙樹さーん」
「んー?」
「やっぱ恥ずかしくないっすかー?」
「んーん」
口にお菓子を咥えているせいか、うまく言葉が紡げていない。
それでも嫌な様子を見せず沙樹は正臣の問いかけに答える。
はにかんだような幸せそうな表情。
目を閉じていても、言葉が出なくてもそれだけは正臣に伝わってきた。
きっと、正臣が動かなければいつまでもこのままだろう。
それはそれで可哀想だ。
正臣は意を決し、沙樹の唇へと繋がるそれに口をつけた。