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まさきあやか
まさきあやか
novelistID. 8259
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疲れた時には甘いもの? / リボーン

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「疲れた時は甘いものだよね」
「「「「「「は?」」」」」」

 唐突に告げられた言葉に、その場にいたディーノをはじめとしたボンゴレの同盟ファミリーのドンたちは思わずその場に固まった。
 本日はボンゴレを盟主とする同盟ファミリーの中でも上位組織のドンたちが一堂に会して今後の方針を決定する日だった。
 いくらボンゴレがイタリアで最大ファミリーとはいえ、この時代に他のファミリーを無視することは出来ない。それゆえに定期的に行われるこの会議では、懸案を討議するのと同時に重要な〝顔見せ〟の意味があった。
 その中で、ほとんどの懸案を終えて気の抜けた一瞬での綱吉の言葉だった。

「ツ、ツナ?」

 書類に視線を落としながら、何かを考えるように呟かれた一言に、他のファミリー達は顔を見わせる。もしや何かの隠喩か何かなのかと思ったのだ。
 そこに、彼の兄弟弟子であり、兄貴分として気心の知れたディーノが恐る恐る声をかけた。ディーノにとって綱吉は可愛い弟分であるのだが、その分彼がときどき突拍子もない事をしでかすことも十分承知していた。
 流石はあのアルコバレーノ達の愛弟子であり、最強と言われる守護者の主である。

「なんですか、ディーノさん?」

 だが綱吉は自分が呟いたのが無意識だったのか、顔を上げると不思議そうに首をかしげた。二十代もすでに半分を超えていると言うのに変わらぬあどけなさはいっそ恐怖だ。
 最初の頃は童顔だのと侮っていたこの会の出席者も、どれだけたっても変わらぬ綱吉に、今では「ボンゴレは不老不死の技術を手に入れたのではないだろうか」とまで囁き合っている始末である。

「い、いや、甘いものがどうしたって?」
「へ?あ…すみませんつい」

 ディーノの言葉に綱吉は自分の一人事が音に出ていた事に気がつき、わずかに頬を赤らめた。

「ちょっと、ここのところ立てこんでまして…気分転換には何がいいかなと思ってたんです」

 そう言って微笑む綱吉に、彼の発言が深い意味をもっていないことに、それぞれがほっとしたように息をついた。
 それから、それならばとそれぞれのお勧めのスイーツを上げていく。上手く彼のお気に召せば、覚えも目出たくなるだろうと言う下心がないわけでもない。

「でしたらコンドッティ通りのフルーツタルトはどうです?」

 ローマにシマをもつドンがそう進めると、綱吉は「フルーツ……」と興味を持ったように視線をそちらに向ける。そうすれば他のドンからも声が上がった。

「でしたらヴァグネルのフルーツジュースはどうでしょう。毎日新鮮なフルーツで作られていますよ」

 それを皮切りに次々にあげられていくフルーツを使ったスイーツの数々に、綱吉はしばらく考え込むと、ニコッと笑みを浮かべた。
 家庭教師に叩き込まれた有無を言わせぬドンの微笑みだ。

「ありがとうございます。大変参考になりました」

 疲れた時には甘いもの、吸収のいいフルーツがいいですよね。と、綱吉はそう言うと、会議の続行を促す。ドン・ボンゴレの言葉に、司会進行役のドンがあわてて頷く。
 納得したらしい綱吉に、結局どれが気に入ったのか聞けぬまま、ドンたちはその日の会合を終わらせることになった。

「なぁツナ」
「はい?」

 会場の外に止められている車に向かう途中、ロマーリオを背後にディーノが尋ねる。

「結局何にすんだ?」

 よかったら一緒に食べねーか?と、誘うディーノに、綱吉はクスリと小さく笑みを浮かべた。先ほど浮かべたようなドンとしての笑みでも、親しいものだけに浮かべる笑みでもない。
 何処か影のある笑みだ。

「え、っとツナ?」

 こう言う時、ジャッポーネの〝微笑み〟には実に様々な意味があるとディーノは実感する。そしてこの笑みは、決してポジティブな意味はないだろう。

「せっかくのお誘いですが、今回はやめておきましょう」

 ―――ディーノさんがお腹壊しちゃったらオレが困りますし

 そう、微笑む弟弟子に、ディーノは「そうか」と頷くことしかできなかった。
 そんなディーノを入り口近くで待っていた山本が不思議そうに首をかしげつつ、綱吉と共に車の中へと消えた。





「山本、骸は?」
「本部に呼び出してるぜ」

 車が動き出すと同時にそう尋ねた綱吉に、山本もすぐさま彼が望む回答を返す。
 そう、同盟ファミリーの面々にはまだばれてはいないが、綱吉の霧の守護者である骸が少しばかり羽目をはずしてくれたのだ。

「あのバカ、やるならばれないようにしろってんだ」
「はははは」

 後始末ばっかりこっちに丸投げしやがって。と、吐き捨てる綱吉に、山本も乾いた笑いを上げた。
 今回骸が羽目を外した相手、つまるところマフィアのファミリーなのだが、新種の麻薬を生み出して一つの街の住人達を廃人にしていたのだ。
 さらにそんな住人達を強制労働につかせ、さらに麻薬を生み出していた。
 綱吉もそんなファミリーを潰すことには文句を言わないが、やり過ぎて周囲のマフィアを巻き込んだことには一言いいたい。

「ドン、どちらへ?」
「厨房」
「は?」

 玄関で山本と別れた綱吉は、すぐに執務室には向かわず、キッチンへと向かった。ボンゴレ本部には、綱吉のために、そして本部に詰めている構成員のための料理を作るために、常時数人の料理人が待機している。
 特に今はジャッポーネ出身の幹部が多いことや、雲雀やハルのように甘いものにうるさい人間がいるので、彼らにとってもいろいろと大変らしい。
 とにかく、その厨房でそこでシェフの一人からあるものを受け取ると、今度こそ執務室へと向かう。

「骸」
「これはこれは綱吉く……あの、その手に持っているものは?」

 いつものように人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべて綱吉を迎えた骸だが、その綱吉の手に持たれた物体に不思議そうに首をかしげた。
 何しろ綱吉の手に持たれていたのは調理に使うハンドミキサー。しかもボンゴレの厨房にあったのは業務用だ。

「疲れ時には甘いものがいいんだってさ」
「は、はぁ」

 骸の質問に答えずに、綱吉はミキサーを掲げて肩をすくめた。

「そう言ったらね、他のファミリーのみんなにフルーツタルトとかフルーツジュースを勧められたんだ」

 果糖はすぐにエネルギーになるからね。と、綱吉は微笑む。

「えっと……お、奢りましょうか?」

 骸だって、やりすぎた自覚は一応、ほんの少しだがあるのだ。
 よって、その迷惑料代わりに驕れと言う、平和的なものであって欲しい思う骸の心を綱吉の持つミキサーだけが裏切る。

「やだなぁ骸、ここにすでにあるだろ?フルーツがさ」

 そう言って微笑みながら迫ってい来る綱吉。手には回転するハンドミキサー。彼の目線は骸の頭、正確に言えばその髪の毛へと向けられていた。
 数分後、綱吉の執務室から悲痛な悲鳴が上がるのだが、予め雨の守護者から一切関与不要が申し渡されていたため、誰も駆け付ける事はなかったと言う。







「僕の髪型が南国果実に似ているのは認めましょう。えぇあぁ認めましょうとも!
 だからって!」

 ―――ミキサー片手に迫ってくるなんて酷すぎると思いません!!!?