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乾杯

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ある満月の夜。。。

「良い月あるなー。」
「そうですね。」

日本の家の縁側に座っている人影が2つ。

「我の家とはまた違った風情があって良いある。」
「ありがとうございます。」

1人は中国、もう1人は日本である。

「中国さんのお酒、とてもおいしいです。」
「四千年の歴史が詰まってるあるからな!」
「この肴も。」
「日本のも良いあるよ。」

月の光の下、2人で酒を飲み交わす。
静かな時が流れた。
酒瓶が2本・3本・4本と、おもしろいように空になっていく。

「ん。空ある。」
「まだありますか?」
「もちろんね!」
「じゃあ、飲みましょう。」

ほんのりと赤く染まった顔で2人は笑いあう。
小柄な体に似合わず、2人はかなりの酒豪であった。

庭ではポチ君が丸くなり、その横では中国が連れてきたパンダがもごもごと動いている。
大気は澄みわたり、冷たい空気は熱を帯びた2人の体を心地よく冷やした。

「もう何本飲んだでしょうか?」
「数えてないあるよ。」

2人で飲んだとは信じられない量の酒瓶を空にしたころ、日本がぽつりと言った。

「ねぇ、中国さん。」
「ん?」
「私、中国さんなしでは生きていけません。」

中国が飲んでいた酒をふきだした。

「ぶっ!いきなり何言うあるか!」
「国として。」
「そっちあるか。」
「他に何が?」
「・・・いいから続けるよろし!」

変なところで天然な日本である。

「私は・・・私の国は色々なところで中国さんを頼っています。支えてもらっています。」
「そうあるね。」
「それは中国さんもです。」
「?」
「中国さんも私なしでは生きていけません。」
「そんなことないある!」
「本当にそう言えますか?」

日本の大きな瞳に見つめられ、口ごもる中国。

「それは・・・。」
「中国さんだって色々なところで、私を頼っていますよ。」
「確かに・・・そうある。」
「だから私達は、互いの支えなしでは生きていけないということですよ。」

空になっていた中国と自分の杯に日本が酒を注ぐ。

「アジアの中心は中国さんです。」
「日本もある。」
「私は・・・。」
「何言ってるあるか。今や日本も立派な一国あるぞ!」
「中国さん・・・。」

中国は目を細めて日本を見る。

「大きくなったあるな。」
「あの時は・・・。」
「謝るなある。我は日本が立派になって、うれしいあるよ。」
「ありがとう、ございます。」
「ただ、もう兄ではねーあるがな。」
「そんなこと!」

日本が怒ったように声を荒げた。
驚く中国。
中国を見つめる日本の顔はなんだか・・・泣いているようでもあった。

「日本・・・。」
「あなたはアジア全体の兄のような存在です。血はつながっていなくても、あなたはみんなの兄です。」
「それは・・・。本当にそう思ってくれているあるか。」
「はい。」

日本はにこりと微笑んだ。

「ですから、これからもずっと。」
「ずっと?」
「ずっと、一緒に生きて行きましょうね。・・・兄上。」
「当たり前ある!ずっと一緒あるよ。我が弟よ。」

2人は顔を見合わせ、照れたように笑った。
きれいに笑った。

「乾杯。」

2つの杯が音を奏でる。

ある満月の夜の2人の話。。。


作品名:乾杯 作家名:音梨音色