ともだち
「ね、ね、すなくん」
きれいなピンク色をした小さな舌を舌足らずに操って、少女はそう言った。すなくん?すなくんとはいったい誰のことなのだろうかと俺は首を傾げる。すなくん。すなくん。砂くん?ああ俺のことか。
「あ、あの、あのね、あの」
少女は顔を真っ赤にして、頬を上気させて、あのね、と必死で言葉を続けようとしている。俺はどうしようか、と考えて、とりあえず見守ることにした。
「う、あ、の、すな、すなくんて、い、つもここいる、け、けど」
「うん」と俺は相槌を打つ。さすがになにか言わないと少女の頬が赤くなりすぎて、少女の髪よりも赤くなってしまうかもしれないから。
「よっよ、よ、よよよよよよよ」
「よ?」
「よか、よかったら!」
ともだちになってくれませんか、と少女は言った。うん、いいよと俺は何の気なしに答える。
間。
少女はきょんとした表情で固まっている。あれえっと、あれ、俺、選択間違えたか。と思ったが、それは杞憂に終わった。花が咲くように、花開くように、ピンク色の髪をした少女は笑った。
「あ、ありがとう!」
砂しかなかった俺の世界に、砂しか注いでこなかった俺の世界に、一輪のにく色をした花が咲きました。