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へたれと言うなかれ!

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大事にしたいのだ。
あの子は初めて本気で恋をして、幾たる障害を掻い潜って時には反撃して、笑っちゃうぐらいに誠実に一途に接して、漸く手にした愛なのだから。
何度でも言うが、大事にしたい。
俺が初めての恋人なのだと面映ゆそうに微笑んだあの子に合わせて、愛を育もうとそう思っている。そりゃあ、今時の若い子は色々と進んでいるが、それはこの子じゃない。臨也が愛した少女は、他のどんな人間よりも繊細で臆病で天然で純粋なのだ。不安にさせるつもりもないが、彼女の意思を尊重したいと思っている。
だから俺は断じて、ヘタれじゃ、ない。






「むしろ俺は紳士だ。ジェントルマンでもいい」
「いきなり何言ってるんですか。しかもそれ同じ意味です」
「・・・・・・・・うん、そーだね」
変な臨也さんと笑いながら、少女は長い黒髪を後頭部でくるりとまとめお団子にしている。いつ見ても器用だなと思う。鏡見ずにできるなんてと感心する臨也に、帝人は慣れですよと味気なく答えた。きっと言われ慣れているのだろう。そう思うと帝人に対しそう言った人間に少しだけむかっとくる。少しだけ。
「それにしても、今年は暑さは異常ですね・・・・」
「だね」
「・・・・・・・・・臨也さんが言うと説得力無いですよね」
全身真っ黒の青年に顔を引きつらせつつも、帝人は飲み物を取る為に台所へと向かった。その背中を見つめ、しかしすぐに逸らす。普段は長い髪に隠されている白い項に、思わず唾を飲み込みそうになったからだ。
臨也は生まれてくる熱を追い出すように息を吐いた。
暑さに加え自分の部屋ということもあるのか、少女は実に無防備かつ刺激的な格好だった。上はキャミソールの上にノースリーブの薄手の襟口の広いTシャツ、そして下はデニム生地の短パン。もちろん今の少女よりも露出度の高い服を着ている女子は居る。其処かしこに。そんな女子を見ても、臨也の心は一ミリも動かされなかったのだが、帝人だけは違う。
帝人は臨也の初めてと言っていい恋の相手で、其処かしこに居る女子とは、臨也の中では全然存在価値が違う。不特定多数の人間を愛していると豪語する臨也の中での特別は本当に特別だ。だからこそ、普段はきちんと制服を着る少女の剥き出しになった肩や項、膝小僧に臨也の理性はじりじりでぎりぎりである。
「ねえ、みかちゃん」
「みかちゃん言わないでください」
「・・・帝人くん、その格好ラフすぎない?」
「は?」
帝人は臨也に言われて、自分の身体を見下ろしてみた。
「普通じゃないですか?」
「いやいや、帝人くんそんな露出する格好とかしないタイプでしょ」
「(露出・・・)でも暑いですし」
「それはわかるけどさぁ」
「田舎の夏はこの格好でいつも過ごしてましたし」
「まじで?!」
「はい」
「・・・帝人くんの生足見た奴社会的に抹殺してくる」
「やめてください。・・・だいたいどうやって見た人探すんですか」
「帝人くん。俺は無敵で素敵な情報屋だよ」
「真顔で言わないでください、怖いです。・・・大丈夫ですよ、僕積極的に外出る子供でも無かったですし」
「でもさぁ」
「それに僕の足なんか見て何が楽しいんですか」
何ってそれはまあ男としての本能というか何というか。
純真な眸で純粋な疑問をぶつける可愛い少女に、臨也は「男は皆狼なんだよ!」と叫びたくなったが耐えた。少女の前では余裕のある大人でいたいというのが臨也の願いである。無駄な努力と言った奴出て来い。
(フェチとかそんな属性無かったはずなのになぁ)
少女の項や、踵に踝、膝小僧とか見ているとその自信も無くなってくる。
(いや俺は帝人君フェチだから問題無いか)
「うう、でもほんと暑いですね・・・・」
「だから俺の部屋にしようって言ったのに」
「臨也さんとこ行ったら出たくなくなるから嫌です」
「別にいいじゃん。俺としては願ったり叶ったり」
「さりげなく監禁願望口にしないでください。僕は臨也さんみたいに自宅警備ができるニートじゃなく品行方正な一学生ですから、学校は休まず行きたいんです」
暑いってだけで行かなくなったら、地元に戻されます。と呟いた帝人に、「それは阻止しないとね」と臨也が言う。少女が近くに居なくなると考えるだけで恐ろしい。だったら、暑さでダレる姿が妙に色っぽくても理性と自制心を総動員して我慢できる・・・・はずだ。
しかしその我慢も畳にへなりと横たわった帝人を見て、糸一本というぎりぎりの状態となってしまった。
「みみみみみみみかちゃん!?」
「だからみかちゃん言わないでください」
「ああうんまあそうだけどもそうじゃなくて!」
「意味不です。・・・・さっきから変ですよ、臨也さん」
君のせいだろぉぉぉぉぉ!!
横になったせいでたゆたう襟の隙間から覗く小さな谷間に臨也は一瞬目が釘付けになったが、なけなしの理性と多大なる根性で目を逸らした。逸らせた。俺、偉い。
「臨也さん?」
寝そべったままこちらを窺う、白い喉元や薄く開いた唇。
いっそ食べてくださいと言わんばかりなのに、残念ながら、そう残念ながら!少女はどこまでも無自覚で天然なのだ。
「・・・計算じゃないフェロモンって怖いよね・・・」
「へ?」
これくらいは許されるだろうと、少女の形の良いおでこに張り付いた髪を払ってやる。帝人はその手を拒絶することなく、むしろ猫のように目を細め受け入れる。その表情にぐっとなりながらも、帝人に無理強いしたくない臨也は今日も耐えるのだ。
せめて自覚はしてほしいなぁとそんなことを思いながら。





「早く大人になってね」
「はぁ・・・・?」
作品名:へたれと言うなかれ! 作家名:いの