Perfect Love
言うなれば、彼のそれは「完璧」で、自他共に認める恋愛至上主義者にふさわしい末路だったのかもしれない。
「何つーか、アレだなオイ。」
「アッシー兼家政婦兼看護師兼貢くんてどーなのよ?」
「ふん、まさに下僕の鑑よ。」
「ha、過保護の極みだな。」
「は、破廉恥なっ!」
「「「いや、そのコメントは可笑しーだろ」」」
誰もがこう言った。
前田慶次は異常だと。
その優しさが、気遣いが、寛容さが、献身が、僕に向ける全てが過剰。
「Hey、QueenTakenaka、傅かれる気分はどうだ?」
一見、報われない献身を続けるヘタレな恋人もどきに見えなくもないせいか、僕らの関係に言及する時周囲の反応は揶揄を含んだものがほとんどだった。
「ああ、最高だね。反吐が出そうだよ。」
それに吐き捨てるように応えるのももう慣れた。
見返りを求めない恋など不毛。変わることのない全て。
それでも、慶次くんはいつも微笑っている。
回した腕にも寄せた唇にも、差し伸べた手にさえ応えることのない僕の傍らで。
浴びせるように与えられる好意。守られ、与えられるだけの行為。
容赦なく積もる想いの淵に溺れて、逃げられないのは僕のほうだ。
どうしてこんなことになったのだろう。
いつからか、どこからかやってきて彼に憑りついた想いは薔薇色の感情なんかじゃなく、影のように歪んだ盲執だった。
「どこいってたの、はんべ」
やわらかく微笑みながら、慶次くんが訊いた。
「こんな寒い日に外に出たらダメだよ」
逞しい腕が僕を抱き寄せる。
冷たい檻のような感触がした。
「愛してるよ、はんべ。だからさ____」
ずっとずっと、ここにいなよ。
そう言って今日も、彼は幸せそうに笑った。
Fin.(鎖で繋がれたような、完璧な君の「愛」)
作品名:Perfect Love 作家名:elmana