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ゴールデンキャット

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細い体。未発達な体。小さな顔、長めの手足。黒い髪、少しだけはねた髪。黒い刺青、それにそう青い筋。金色の目、首筋の角。

玲治は、口を大きく開けて、少しだけ舌を浮かせ、目を瞑って大あくびをした。
その仕草は、全く猫そっくりだと俺は思う。
玲治はパクンと口を閉じ、目をごしごしとこすり、俺の視線に気付くと不機嫌な顔を作った。そして、
「なんだよ」
可愛げの無いセリフ。だが、そこが俺にとっちゃ可愛いところで、気に入っているところでもある。まぁ、もう少し素直な方が好みではあるが。
「いや、眠そうだな」
「うん。眠い」
言って、また目をこする。
その仕草はやたらと子供に見える。まぁ、俺とくらべりゃガキに違いないが。
そんなことを考えているうちに、彼はまた大きくあくびをした。
そしてあたりを見渡し、奥まであるくと、カウンターのような台を回りそこにころりと横になる。
「おい、少年」
「なんだよ」
「そんなとこで寝る気か・・・?」
後を追って、カウンター越しに転がった玲治を見て俺は眉を潜めた。
此処は、崩れかかった元商店(おそらくブティック)。決して安全とはいえない場所だ。いつ何時悪魔が出てもおかしくはない。
その、商店のカウンターの中で無防備に丸くなるのにはあきれてしまった。
「うん。まぁ大丈夫だろう」
「大丈夫だろうって・・・お前、そんな袋小路で寝て、襲われても逃げ場がないだろう?」
確かに、こいつの寝首をかけるような悪魔はそうそう居ないが・・それでも無防備すぎる。
「だって・・ねむひんら・・・・・」
言葉は途中からまた大きなあくびに変わっている。
「そんなに眠いのか・・・?」
悪魔ってのはそんなに寝るものだっただろうかと、カウンターによりかかり、玲治を覗き込む。
玲治は退治のように横に身体を丸めて(彼は仰向けになって寝れない)、面倒臭そうに俺を見た。
「煩いな・・・成長期なんだよ」
「関係ないだろ?」
「あるよ。寝る子は育つっていうんだよ。日本じゃな」
「なるほど、赤ん坊は寝るのが仕事ってやつだな?」
言うと、彼は嫌そうに眉間に皺を寄せた。少し引用を間違ったのかも知れない・・・が、それについては彼は何も言わなかった。
「そうしていると、猫に似ているな」
再び玲治が目を閉じたのを見計らって、そう言った。眠られては・・・俺がつまらない。
すると、煩そうに目を開ける。
「寝るのを邪魔したいのか?」
多少、苛立ちを含んだような言い方だが、怒っているわけではなく・・・どちらかというと、機嫌はいいほうだと、俺にはわかる。世間的には短い付き合いだが、それでも密度の濃い付き合いだ。
何せ、殺し合いをした仲なのだから。
その証拠に、
「ビンゴ」
口元を上げて、悪戯めかして言ってみると、彼は目を細めて、小さく肩を震わせて笑った。
そうするとますます猫に似ている。
カウンターを乗り越え、玲治の鼻先に着地する。
「ダンテ・・・!」
非難めいた声がすぐに上がった。
「悪い悪い」
身を起こしかけた玲治は、しばらく俺を睨んだ後、結局先ほどと同じように横になった。
手を曲げて顔の近くに置き、足を軽く抱え込んでいるような格好だ。
玲治は俺の足元をしばらく見た後、ゆっくりと目を閉じた。長いまつげが頬に影を作っている。
それを確認して俺はそのままの場所でかがみこんだ。
当然、彼に覆いかぶさるような格好になる。
なにしろ、足のすぐそばに彼の頭があるのだから。
俺がすぐ近くにいる気配はわかっているはずだが、玲治は何も反応を返さない。
機嫌がわるいと、彼はそれこそ手負いの猫のようにフーフーいう。
傍に居ることを黙って許すということは、機嫌がいいのだ。
本当に猫みたいなやつだ。
手を伸ばし、彼の髪に触れる寸前で思い立ち、手袋を外す。
そして、小さく跳ねている髪をはじく。
東洋人の髪はみんなそうなのかしらないが、彼の髪は柔らかく、すこしだけしっとりとしている。
触り心地がいいのだ。
彼は髪を短くしているが、少しもったいなくも感じる。
彼を猫にしたら、きっと青みがかった黒毛の猫だろう。
もちろん、目は金色だろうな・・・そう思いながら、本物の猫のように頭を撫でていると・・それまで寝た振りをしていた玲治が身体を震わせて笑った。
「くすぐったいって。寝れないじゃん」
言って目をあけた玲治の顔からはすでに眠気が去っている。
キラキラと輝く金色の目は、宝石のように見える。縦に入る瞳孔は紡錘系で今は大きく膨らんでいる。
これで尻尾と耳さえ生えてれば完璧だ。
少し乱暴に、玲治の額から頭にかけて撫で付けると、玲治はやはり猫のように目を閉じてそれを受ける。
「猫そっくりだぜ。少年」
人差し指で、鼻の頭をかいてやると、鼻の頭に皺を寄せる。
「はは。俺の飼い猫になるか?」
ん?っと言いつつ、顎を下をさらりと撫でると、玲治は微笑をたたえたまま眉をしかめた。
「ごめんだな」
しかし、俺が撫で回すのには何もいわない。
顎の下を指で掻くようにくすぐると、のどの奥で小さく笑って目を閉じる。
喉を鳴らす猫。
「でも」
「ん?」
「ちょっと悪くないかなって思った」
言って目をちらりと開けるその顔は・・・ちょっと反則だ・・・。
無意識だから余計にタチが悪い。
「俺の猫になるか?」
試すように、悪戯めかし・・・それでも本気を十分に感じさせるような声で尋ねる。
「・・・・そうだね。飼い猫はいやだけど・・・あんたの猫ならいいよ」
一瞬だけ真面目な顔で言っておいて・・・すぐに笑う玲治。計算しているのか・・・それとも、全くの考えなしなのか・・・判断に迷う。こいつの考えは、時にとても読みにくい。
「俺の猫ね」
「あんたの猫」
「俺の悪魔でもいいぜ?」
口の端を引き上げて、言ってやる。もちろん、90%以上は本気だ。
玲治は、すぐにそれに応えずに、上半身を起こした。
そして・・・
「ごめんだね」
言うと、ふいに顔を近づけ一瞬だけ俺の唇に自分のそれを重ねた。
小さく驚いた俺を、金色の目で1秒を見つめ、今度は俺に背を向ける形で横になった。
「 じゃ、俺ねるから、見張り頼むな」
その反応の早さには、流石の俺もついていけなかった。
微妙な間を空けて、あぁと言うのが精一杯。

まったく・・・俺の悪魔は気紛れで困る。
俺はにやりと笑って、カウンターの上に玲治を背にして座った。
やることが無い=(イコール)退屈だと思っていたが・・・
背中越しに寝息を聞くのは、それほど悪くはない・・・かもしれない。
作品名:ゴールデンキャット 作家名:あみれもん