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夏の終わり

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ふと見上げた先、非常階段を上るアリスの後姿を見つけて、図書館へと向かうはずだった足をとめた。
あの階段を上っても、新館の室内には入れない。
一体、何をしているのか・・・。
興味を引かれて非常階段へと足を向ける。
石の階段を上り、2階の踊り場についたときアリスを見つけた。
落ち込んだように座り込んでいるアリスに少しだけ火村はぎょっとした。
三角座り、両手を膝の上につき、顔を伏せている。
「・・・どうかしたのか?」
声をかける・・・がアリスの反応は薄い。
「あぁ・・・火村か」
帰ってきた声こそ普通だが・・・顔をあげないアリスに泣いているのかと思い、火村は横に座るのをためらう。
女にでも振られたのかと一瞬思った・・・が、近頃、その手の話をアリスがしていなかったのことを思い出し、その線を捨てる・・・とすれば、レポートで落第点をつけられたか・・・それとも、小説を応募したものが・・・
考えていると、居心地が悪そうにアリスが身じろぎした。
黙ったまま近くに立っているのが気になるらしい。
「なにしてるん?」
「あ・・・いや。まだ暑いなと思って・・・・」
すでに9月の半ばに入っているが、まだまだ昼間は暑い。
蝉だってまだ完全に死滅したわけではなく、今、この瞬間にも数匹のなきごえが少し離れたところからする。
「あぁ・・・そやなぁ」
アリスはやはり顔を上げない。
こないだ添削を頼まれた小説はそれほど悪いものではなかった・・・。それにその結果が出るのはまだ先だったはず・・・とすれば・・・
「なぁ。火村」
「何だ?」
「紙もってへん?」
「紙・・・?」
方に下げていたデイバッグを見る。
「ルーズリーフなら入っているが・・・・」
「あ、そっちの紙やなくて。ティッシュないか?」
「ティッシュ?」
それなら・・・とディバッグを開き、ポケットティッシュを出す。
先日、街中で渡された怪しげな番号のついたやつではあるが・・・。
「くれ」
っと、顔を上げずに手を出すアリス。その手の上にポケットティッシュを置いてやると、それを抱え込むようにしてごそごそとなにやらしている。
正確にはわからないが、数枚を抜き取り顔を拭いているようだ。
本当に泣いているのかと思ったとき、ようやくアリスは顔を上げた。
そして、その顔を見て火村は思わず噴出した。
「お前・・・それ、何だよ」
アリスの顔・・・いや、鼻にはティッシュがつっこまれている。
それも二つの穴それぞれに、筒状に丸めたティッシュが。
「えらく男前があがってるじゃねぇか」
火村が言うと、アリスは口を尖らせ、ついで鼻頭に皺をよせた。
「うっさいわ」
アリスの言葉は鼻が両方ふさがれているせいか、いつもよりくぐもって聞こえる。
「で、どうしたんだ?暑さで頭に血が上ったか?」
にやにやと笑ってみせる。アリスは恨みがましい目で火村を睨み言った。
「いうとくけど、君のせいやからな。」
「俺のせい?」
そこでようやく、火村はアリスの隣に腰を下ろし、壁に背を付いた。
庇の陰になり、風が吹くと気持ちがいい。しかも人がいない・・・穴場だと火村は思った。
「そうや。さっき経済学部の近くあるいとったら、女の子らがきゃーきゃーやっとってな。
 こりゃ、火村が囲まれてるんちゃうか、いっちょからかったろうと思ってたら近づいていったんや。
 そしたら、女の子に肘打ちくらってなぁ・・・・」
クリーンヒットだとムッスリしながら言う。
「で。鼻血だしたのか」
あきれて言うと、アリスはあっさり頷いた。
「それの何処が俺のせいなんだ?」
アリスは、下唇を突き出すようにしてそっぽ向き、気がついたように片方のティッシュを取り、付け替えている。
それほどひどいものではないらしく、もう殆ど止まっている。
「けーっきょく、女の子らが何をさわいどったかわからんかったし・・・」
「そんなのどうでもいいだろう・・・・?」
「・・・・」
黙り込むアリス。
たったこれしきのことで拗ねるのかと、火村はあきれる。
頭の後ろに腕をまわし、深く壁にもたれる。
涼風が吹き、遠くに学生たちの声が聞こえる。
本当にいい穴場だ。
見るともなしに空を眺めていると・・・黒いものが飛んできた。
大型の蜂のような黒いものがバタバタと羽を忙しく動かしながら、うろうろととび、やがて、火村が背にしている壁の高い場所に止まった。
蝉・・・
思う間こそあれ、すぐにその蝉は腹と羽を震わせ鳴き始めた。
しかし・・・その音は、最盛期のころよりも枯れている・・・。どこか寂しい鳴声だ。
「夏も終わりやな」
いつのまにか、ティッシュを二つとも鼻から抜いたアリスが、俺と同じように視線を上げていた。
「そうだな・・・」
風も何処となく秋の気配を漂わせている。
柄にもなくしんみりしたような気分に火村がなったとき・・・
「秋刀魚やな」
ぽつりとつぶやかれた言葉に、思わずアリスの顔を見直す火村。
アリスは火村の視線に気付き、照れたように視線をそらす。
アリスらしい・・・・。
鼻で笑った後、火村は立ち上がり、肩にかけていたデイバッグを抱えなおした。
「いくぞ」
「どこに?」
「秋刀魚、食うんだろ?」
途端に満面の笑みを浮かべるアリス。それにチラリと笑って、
「鼻血、俺のせいなんだろ?」
言って、階段を下りだした火村。慌てて後を追おうとアリスは立ち上がり、ティッシュを置きっぱなしだった事に気付き、両手で拾い集める。そして小走りに、火村の背を追いかけ言った。
「しゃぁないから、それでごまかされたるわ!」
作品名:夏の終わり 作家名:あみれもん