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日曜日、埋葬

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君似ている、

朝のニュース番組で、世界で最大の花が萎んだ、というニュースを見た時から、僕はの関心はそればかりであった。あまりにそのことばかり考えていたせいで、食パンを焦がしてしまった。世界で最大の花の名前は長くて何度口にしても覚えることが出来なかった。最後にコンニャクがつくということとだけはなんとか覚えた。それから、その花の名前は妙におかしなリズムであるということもだ。開花する当初は連日ニュースで流れ、大勢の人間がその奇妙な香りと姿を一目見ようとやってきていた、ということをブラウン管越しに、はあ、ともほお、とも思っていた。観に行った知人に聞けば、生ゴミのような異臭であった、と答えるものもいれば、騒ぐほどの臭いではなかった、という人もいたぐらいで、数日前の世界で最大の花の開花は僕の興味の範囲外であった。

そもそも臭い香りを嗅ぎにわざわざお金を払って行列に並ぶ自分の姿が酷く滑稽に思えたし、それに並ぶ自分はなによりも酷い醜い生き物に思えたからだ。けれどブラウン管越しに行列を眺めているだけならば<人間>がとても奇妙で愛おしい生き物に思えたから、それでよかったのだ。歪な造形、異臭、世界最大の花、と呼ばれるにもかかわらず、なんともその枯れる様は悲しい姿なのだろうか。

それを、僕は日本くんに教えてあげたい、そう思ったのだ。その花は、とても僕に似てる、そうして君にも似てる。いびつな姿がすごく愛しい、愛してあげたい、そう思わせるのだ。そんな花が、今日しぼんでしまったそうだ。世界最大と歌われた花が、萎んでしまったそうだ。悲しい、あまりに悲しいはなしだ。そのしぼんだ花を一体誰がみとってくれるのだろうか、しぼんだ体に、香りはするのだろうか。それは一体、そんなかぐわしい香りがするのだろうか。君はこのことを知っているのかな、知っていたらなんというのかな、僕はとても今訊ねてみたい気がした。

ダイヤルを押してから、呼吸を整えた。受話器越しの君の声がすごく悲しそうで、僕はなんだかとてもおかしな気分になった。うわずった声で僕は言おう、世界最大の花が枯れる姿を観に行こう。手をつないで一緒に観に行こう。そう、無邪気なふりをして。君はその花を観て、涙を零すだろうか。ひとつ、ふたつでもいい、涙を流してくれるだろうか。愛してくれるだろうか。

おはよう、その一言で、優しく一日を始めるために、僕は静かに息を吸い込んだ。







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20101019  日曜日、埋葬
作品名:日曜日、埋葬 作家名:エン