ポッキープリッツの日 / FF7
魔晄都市ミッドガル。今や世界のほぼすべてを掌握しつつある神羅カンパニーのおひざ元とも言えるこの街に今日も今日とて賑やかな出来事が起こりつつあった。
その日クラウドは、いつもどおりに授業を終えると、クラスメイトであり、友人でもあるセシル、フリオニールと共に食堂へと向かっていた。
彼らのクラスは本日は座学だったが、他の面々はマテリアの実習だったので外出ている。そのため戻ってくるまでにはまだかかるだろう。
「おー、ストライフ」
後少しで食堂。と言うところで、食堂から出て来た少年がクラウドの顔を見てそう言った。見たことがある顔なので、おそらくは同級生だろう。
クラウド達の学年は、クラスを超えて仲がいい事で有名だ。何しろ野外訓練ともなれば一致団結しての狩りだの飯盒炊爨だのに走り回る。
同じ釜の飯を食った仲間。と言うのは侮れないものなのだ。親が神羅の幹部?ナニソレ美味しいの?自然の前では無意味だよね?を、スローガンにどんどんたくましくなる彼らである。
それはさておき、そんな一人の何とも言えない表情に、クラウド達は顔をしかめた。
「どうしたんだ?」
フリオニールが代表して尋ねると、少年は「行ってみりゃわかる。早く何とかしてくれ」とひらひら手を振ると、彼らの横を通過していった。
そんな少年に三人は首を傾げ、とりあえず行ってみるかと食堂のドアをくぐった。ドアの向こうから現れたクラウドに、食堂にいた誰もがほっとしたような安堵の表情を浮かべる。
怪訝そうに眉をはね上げたクラウドの肩をセシルがトントンと叩く。なんだろうと視線を向ければ、穏やかな微笑みを浮かべた彼が「あっち」と言うように指をさした。
フリオニールとクラウドがそちらへと視線を向ける。
「……何してんだ、あんた」
「クラウド~~~~~」
そこには、クラス・セカンドのソルジャーでクラウドの親友でもあるザックスが苔むしていた。もとい、食堂の隅でいじけていた。
クラウドが声をかけるとガバリと起き上り、駆け寄る。でかい犬が襲いかかってくるような気がしてクラウドはあわててよけた。
「クラウドひどい!」
「やかまし!」
かわされてしまったザックスが叫ぶがクラウドはつれなく叫んだ。
「まぁまぁサー・ザックスもクラウドも落ち着けって」
それをフリオニールがなだめると、二人をテーブルへと誘導する。授業後で自分だって空腹なのだ。
「で、どうしたんだよ」
セシルが持ってきてくれた――その間クラウドはザックスの相手をしていた――夕飯を食べながらクラウドが尋ねれば、よくぞ聞いてくれましたと言うようにザックスが顔を輝かせた。
ちなみに本日の夕食のメインディッシュは大福豆と豚肉の煮込みスープである。限りなく豆しか見えないが、豚肉の煮込みスープだ。
ちなみに日ごろの食生活がこんなんだから、野外演習で――モンスターとは言え――肉に目の色を変えるのだろうかと教官の一部が考えていたりするのだが、クラウドにはどうでもいい事である。
「クラウド、今日は何の日だ!?」
「今日?」
「十一月十一日だね」
首をかしげるクラウドに、セシルがそう告げる。だがそう言われてもピンとこないクラウドは、ザックスへと視線を向けた。
ザックスと言えば、先ほどまでの暗い様子が嘘のようにうきうきとしている。
「…何の日なんだ?」
「これだぜ!」
聞かないと始まらないだろうなぁと、半分諦めながらクラウドが尋ねると、ザックスが取り出したのは、長方形の箱だった。
「プリッツと」
「ポッキーだね」
「……あんたバカだろ」
とりあえずそれだけでなにが言いたいのかわかったクラウドは、今度こそ呆れたように親友を見つめた。
「そう言えばあんた今日はオフだっただろうが」
沢山いる女友達とやってもらえ。と、クラウドが言うと、ザックスはまたズーンと暗い雲を背負った。どうやらもうすでにチャレンジした後らしい。
「だからって野郎同士でどうするんだよ」
やる方も見る方もえぐいだろ。と、クラウドが言えば、話題についていけなかったらしいフリオニールがセシルに尋ねて顔を真っ赤にしていた。どうやら彼はポッキーゲームを知らなかったらしい。
それを横目で見つつ、クラウドが首を振る。
「いやそれはわかってるけどよ」
いっくらクラちゃん美人でも、男だしなぁと、ザックスがため息をつく。この野郎と、クラウドがこめかみを引きつらすのをまぁまぁと宥めつつ、セシルが首をかしげる。
「それで、結局何の用だったんです?」
「そうそうクラウド、大将は知ってると思うか?」
「あ~どうだろうなぁ…」
あの人変なところで世間知らずだし。と、神羅が世界に誇る英雄を捕まえてクラウドがそうため息をつく。尤もザックスも「そうそう」と頷いているのだから仕方がない。
まぁそう言う俗っぽいことに詳しい英雄と言うのも微妙なので構わないだろう。
「と言うわけで、クラウド」
「却下」
皆まで言わさずにクラウドはバッサリと言い切る。
「え~いいじゃねぇかよぉ」
「サー・セフィロスとサー・ジェネシスあたりなら笑って許してくれると思うがな。サー・アンジールが目撃したらどうなると思う」
「……下手したら倒れるな」
そうだろうな。と、真面目、堅物を絵にかいたようなソルジャー最後の両親とも言うべき人物を思い出し、思わず三人がうなずく。
「と言うわけで、却下」
「ちぇ~~」
あんまりバカなことばっかり言ってるなよ。と、年下――精神年齢でいえば相当年上だが――のはずのクラウドにそう言われ、ザックスは不貞腐れたように頬を膨らませたのだった。
*
「で、これが置き土産?」
「あぁ」
夕食後、それぞれ入浴まで済ませたクラウド達。ザックスが置いてあったポッキーとプリッツのはこの山にジタンがため息をついた。
同期はともかく、食べざかりの自分たちには嬉しい物質支援なのでありがたく頂いておこう。スコールもジタンもそう割り切ると、さっそく一箱に手を伸ばした。ちなみにクラウドはすでに一箱あけてポリポリとかじりながらバイク雑誌を読んでいる。
「あ、クラウドそれ期間限定の奴だ」
「もうこれ最後だ。ん」
スコールがクラウドの横にあったパッケージを見てそう言えば、クラウドはそれを手にとって頷く。
それから咥えていた食べかけのプリッツをスコールへとそのまま差し出した。スコールも気にした様子もなくクラウドに顔を寄せるとそれを咥えたのを見れば、パキンと言う音と共にクラウドが自分の方をかじり取る。
「サンキュ」
「ん」
短く礼を言うスコールに、クラウドも頷くと、二人はそれぞれの雑誌へと視線を落とす。
「……………セシル」
「とりあえず、サー・ザックスとサー・セフィロスには黙ってよっか」
一連の動作を見守ってしまったジタンが、思わずもう一人の目撃者の名前を呼べば、セシルも苦笑いを浮かべてそう言うのだった。
「スコールも、ガサツになったよなぁ」
前はペットボトルの回し飲みもダメだったのに。と、貴族出身の母を持ち、育ちのいい同級生のある意味変わり果てた姿にジタンがため息をつく。
その日クラウドは、いつもどおりに授業を終えると、クラスメイトであり、友人でもあるセシル、フリオニールと共に食堂へと向かっていた。
彼らのクラスは本日は座学だったが、他の面々はマテリアの実習だったので外出ている。そのため戻ってくるまでにはまだかかるだろう。
「おー、ストライフ」
後少しで食堂。と言うところで、食堂から出て来た少年がクラウドの顔を見てそう言った。見たことがある顔なので、おそらくは同級生だろう。
クラウド達の学年は、クラスを超えて仲がいい事で有名だ。何しろ野外訓練ともなれば一致団結しての狩りだの飯盒炊爨だのに走り回る。
同じ釜の飯を食った仲間。と言うのは侮れないものなのだ。親が神羅の幹部?ナニソレ美味しいの?自然の前では無意味だよね?を、スローガンにどんどんたくましくなる彼らである。
それはさておき、そんな一人の何とも言えない表情に、クラウド達は顔をしかめた。
「どうしたんだ?」
フリオニールが代表して尋ねると、少年は「行ってみりゃわかる。早く何とかしてくれ」とひらひら手を振ると、彼らの横を通過していった。
そんな少年に三人は首を傾げ、とりあえず行ってみるかと食堂のドアをくぐった。ドアの向こうから現れたクラウドに、食堂にいた誰もがほっとしたような安堵の表情を浮かべる。
怪訝そうに眉をはね上げたクラウドの肩をセシルがトントンと叩く。なんだろうと視線を向ければ、穏やかな微笑みを浮かべた彼が「あっち」と言うように指をさした。
フリオニールとクラウドがそちらへと視線を向ける。
「……何してんだ、あんた」
「クラウド~~~~~」
そこには、クラス・セカンドのソルジャーでクラウドの親友でもあるザックスが苔むしていた。もとい、食堂の隅でいじけていた。
クラウドが声をかけるとガバリと起き上り、駆け寄る。でかい犬が襲いかかってくるような気がしてクラウドはあわててよけた。
「クラウドひどい!」
「やかまし!」
かわされてしまったザックスが叫ぶがクラウドはつれなく叫んだ。
「まぁまぁサー・ザックスもクラウドも落ち着けって」
それをフリオニールがなだめると、二人をテーブルへと誘導する。授業後で自分だって空腹なのだ。
「で、どうしたんだよ」
セシルが持ってきてくれた――その間クラウドはザックスの相手をしていた――夕飯を食べながらクラウドが尋ねれば、よくぞ聞いてくれましたと言うようにザックスが顔を輝かせた。
ちなみに本日の夕食のメインディッシュは大福豆と豚肉の煮込みスープである。限りなく豆しか見えないが、豚肉の煮込みスープだ。
ちなみに日ごろの食生活がこんなんだから、野外演習で――モンスターとは言え――肉に目の色を変えるのだろうかと教官の一部が考えていたりするのだが、クラウドにはどうでもいい事である。
「クラウド、今日は何の日だ!?」
「今日?」
「十一月十一日だね」
首をかしげるクラウドに、セシルがそう告げる。だがそう言われてもピンとこないクラウドは、ザックスへと視線を向けた。
ザックスと言えば、先ほどまでの暗い様子が嘘のようにうきうきとしている。
「…何の日なんだ?」
「これだぜ!」
聞かないと始まらないだろうなぁと、半分諦めながらクラウドが尋ねると、ザックスが取り出したのは、長方形の箱だった。
「プリッツと」
「ポッキーだね」
「……あんたバカだろ」
とりあえずそれだけでなにが言いたいのかわかったクラウドは、今度こそ呆れたように親友を見つめた。
「そう言えばあんた今日はオフだっただろうが」
沢山いる女友達とやってもらえ。と、クラウドが言うと、ザックスはまたズーンと暗い雲を背負った。どうやらもうすでにチャレンジした後らしい。
「だからって野郎同士でどうするんだよ」
やる方も見る方もえぐいだろ。と、クラウドが言えば、話題についていけなかったらしいフリオニールがセシルに尋ねて顔を真っ赤にしていた。どうやら彼はポッキーゲームを知らなかったらしい。
それを横目で見つつ、クラウドが首を振る。
「いやそれはわかってるけどよ」
いっくらクラちゃん美人でも、男だしなぁと、ザックスがため息をつく。この野郎と、クラウドがこめかみを引きつらすのをまぁまぁと宥めつつ、セシルが首をかしげる。
「それで、結局何の用だったんです?」
「そうそうクラウド、大将は知ってると思うか?」
「あ~どうだろうなぁ…」
あの人変なところで世間知らずだし。と、神羅が世界に誇る英雄を捕まえてクラウドがそうため息をつく。尤もザックスも「そうそう」と頷いているのだから仕方がない。
まぁそう言う俗っぽいことに詳しい英雄と言うのも微妙なので構わないだろう。
「と言うわけで、クラウド」
「却下」
皆まで言わさずにクラウドはバッサリと言い切る。
「え~いいじゃねぇかよぉ」
「サー・セフィロスとサー・ジェネシスあたりなら笑って許してくれると思うがな。サー・アンジールが目撃したらどうなると思う」
「……下手したら倒れるな」
そうだろうな。と、真面目、堅物を絵にかいたようなソルジャー最後の両親とも言うべき人物を思い出し、思わず三人がうなずく。
「と言うわけで、却下」
「ちぇ~~」
あんまりバカなことばっかり言ってるなよ。と、年下――精神年齢でいえば相当年上だが――のはずのクラウドにそう言われ、ザックスは不貞腐れたように頬を膨らませたのだった。
*
「で、これが置き土産?」
「あぁ」
夕食後、それぞれ入浴まで済ませたクラウド達。ザックスが置いてあったポッキーとプリッツのはこの山にジタンがため息をついた。
同期はともかく、食べざかりの自分たちには嬉しい物質支援なのでありがたく頂いておこう。スコールもジタンもそう割り切ると、さっそく一箱に手を伸ばした。ちなみにクラウドはすでに一箱あけてポリポリとかじりながらバイク雑誌を読んでいる。
「あ、クラウドそれ期間限定の奴だ」
「もうこれ最後だ。ん」
スコールがクラウドの横にあったパッケージを見てそう言えば、クラウドはそれを手にとって頷く。
それから咥えていた食べかけのプリッツをスコールへとそのまま差し出した。スコールも気にした様子もなくクラウドに顔を寄せるとそれを咥えたのを見れば、パキンと言う音と共にクラウドが自分の方をかじり取る。
「サンキュ」
「ん」
短く礼を言うスコールに、クラウドも頷くと、二人はそれぞれの雑誌へと視線を落とす。
「……………セシル」
「とりあえず、サー・ザックスとサー・セフィロスには黙ってよっか」
一連の動作を見守ってしまったジタンが、思わずもう一人の目撃者の名前を呼べば、セシルも苦笑いを浮かべてそう言うのだった。
「スコールも、ガサツになったよなぁ」
前はペットボトルの回し飲みもダメだったのに。と、貴族出身の母を持ち、育ちのいい同級生のある意味変わり果てた姿にジタンがため息をつく。
作品名:ポッキープリッツの日 / FF7 作家名:まさきあやか