花占い
ふわふわした足取りでグンマは歩いている。
長髪を柔らかに風に揺らしながら“花占い”に興じる姿は、可憐で子供じみていた。
こういうのは一本だけにしておくんだ、沢山取ると花がかわいそうだし、占いにもご利益がなくなりそうだからね。言い聞かせて摘み取ったその花は、彼の唇に似た淡い色だった。
そんなことにも胸をときめかせている自分がいる。華奢な後姿から目を離せない自分がいる。
高鳴る鼓動も、落ち着かない足音も、風が隠してくれるだろうか。
この気持ちは誰にも知られたくないと願った。
「きらい、すき、きらい。」
呟きはそこで止み、グンマの足も止まる。
花占いはどうやら失敗に終わったようだ。がっかりしているのだろうか。
どう慰めようかとキンタローが考えていると、突然グンマが振り返る。一枚だけ花びらが残っているそれを差し出された。
訳が分からないまま受け取ると、グンマは照れ臭そうに笑う。それから身をひるがえして駆け出した。
花占いはまだ終わっていなかったのか?
頼りなげに揺れる最後の花びらが、そっと自分の手元に残った。
“ す き ”
彼の唇に似た淡い色のそれが、そう囁きかけていた。
「俺も好きだ。」
そう言って、駆け寄って抱きしめたかったが、できなかった。
不意うちの風が大切な花びらをさらっていってしまった。
だから自分も心の中で囁きかける。
(俺も好きだ。)