悲恋奏 「夢」 ~アーサー視点~
「大っっっ嫌いだっ!!」って言っちまうと思う。
あんな兄貴たちに囲まれて育ってきたせいかな、
愛される…とか、愛する…とかそういう気持ちがオレには理解できなかった。
いや、「しなかった」だな。
でも、お前と出逢ってから多少は…愛すること、愛されることを知った。
「オレはアーサーが大好きなんだぞっ!!」
今までにもらったどんな名誉よりうれしかったのを覚えてる。
…そのときはくすぐったくて、恥ずかしくて…苦笑いで返してしまったけど。
あのときは「兄弟」だった、と言えるかな?
お互いが思い合っていたのなら……きっとそうなんだろう。
「独立するよ」
あんなにちっちゃかったお前がいつの間にか
オレの背を追い越して…その勢いのままオレから離れていった。
雨が降り続く戦場でお前は泣かずに、泣いているオレに別れを告げた。
これで「夢」は終わった。
戻ってきた何も無いただ奪うだけの生活。
奪っても、奪ってもオレの心は満たされなくて…
そうわかっていても、オレは奪い続けた。
そんな折、ある一つの「国」と逢った。
オレよりもずっと年上の「眠れる獅子」。
アイツには弟妹がいた。
その一人とじゃれ合うアイツの姿が、オレの「夢」に重なった。
羨ましかった。
アイツらの絆には永遠が見えた。
オレとお前には無かったそれが。
だから、特別な方法で壊してやった。
それでも、アイツの目は闘志の光を失わず明らかに不利な状況でオレに……
「西戎などに亜細亜は穢させない!!」
オレが「悪」になった瞬間だった。
立ち上がれないぐらい壊し奪って
やっと、アイツは……負けた。
ある意味、アイツの「永遠」も壊してしまった…。
許されるのなら……
戻ってこない過去をもう一度。
会うことはもう無いと思っていたけど、共に武器を手にした。
戦うべき相手は…
お前にとったら…大切な親友。
アイツにとったら…愛しい弟。
そして、オレにとったら…「永遠」の相棒。
やらなければならない……愛しているのなら。
作品名:悲恋奏 「夢」 ~アーサー視点~ 作家名:狼華