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空回リピート

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そろそろ起きるんでしょ、というおはようのキスを唇に落とされてから、まず瞼をひくりとうごめかせる。次に置かれている世を薄目で見遣る。時に非情でいても何処か憎み切れない、優しい世を見つめ返す。そうしてやっとこさおやすみなさいを、自分の起き上がる過程によって腹部から滑り落ちた体温に掛ける。
端整な顔立ちは安らかに睡眠を貪っていて、きめ細やかな頬をそろり控えめにつねる。僕達は多分、すきなことにそれぞれが夢中になり過ぎている。食事を抜かすことは前提で、ぎりぎりの限界まで眠りに落ちないことだって当たり前で、恋人と会話することすら思考から抜けてしまうから。
気付けば無意識下に、重力の働きのようにパソコンを起動させている。キーボード上で軽い音楽を奏でる指先はしなやかである。溜息。


臨也さんに誘われて情報を取り扱う職に就いた。池袋に居る情報屋は二人になった。敵対ではなく共存を互いに望んで、現在の関係となって拡大させた縄張りを巡ることはとても目が回ったけれど、お互いの技量を併せて質を高めていく作業をどちらも楽しんだ。
だから、今の遣り取りは送信された電子によるものだけになっていて。
此方側から触れることすら赦して貰えない。赦すことも、造り替えてしまった自分にはいささか難しい。隣に居るのに何処か寂しくなる。遠距離恋愛でもあるまいし。だけれども、ふと訪れる独りきりの時間より寂しい。
こんなにも擦れ違うなど、いつの間にか関係は蝋燭の灯りのように消え失せてしまいそうでこわいのだが、この現在を尋ねるのはすぐさま幕が降りてしまいそうで、もっとこわい。
心を掴めないと思えば、間接的な扱いはとても心を砕かれているとも思える。信じてあげられたと感じれば、やはり間接的であるから結んでいた手を振りほどかれる冷たさを感じる。そういったものを繰り返しては、活動出来る時間に脅迫のある観念に迫られて呆気なく接触を諦める。

ねぇ、差し出す対価は何でしょうか、臨也さん。僕は、この恋心以外なら構いませんよ。遠慮のなさがあなたの取り柄でしょう?


降り積もった好ましさが愛おしさを形成して、それらを材料に感情を紡ぎ続ければ優しさや慈しみの表現が湧いてくる。そんな恋をさせてくれたあなたへの感謝を、もう一度のおやすみなさいのキスに乗せて贈ろうとした。すると傍らでもぞりと動く気配がした。

しまった、おはようございますにするべきだった。
作品名:空回リピート 作家名:じゃく