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「お前、臨也さんとつきあってるって、普段、なにしてんだ?」
 親友は弁当のからあげをつつきながら、心底不可解と顔に書いてそう言った。ううん、とこちらも卵焼きを口の中でもごもごと咀嚼しながら考える。たいてい、この親友は折原臨也というにんげんをあまりにんげんとして認識していないので、ご飯をたべないと死ぬ、くらいのことならああまあそうだよな、と納得するけれど、僕がいないとさみしくてすねるんだ、というと何を言っているのかわからない、という心底不思議そうな顔をしたりもする。
 だから、どうせ信じないんだろうけど、と思いながらも正直に言った。
「んー。昨日は、お弁当作って、手を繋いで公園までピクニックに行ったよ?」
 親友が引いた。いっそ退いた。おもしろいほど。ちなみにからあげは箸にささったままである。そして、うたぐりぶかそうな眼。
「臨也さんと?」
「臨也さんと」
 淡々と答える。親友は、ふ、と穏やかな顔で窓の外を眺めた。
「………幻聴か?」
「そうかもね」
 こちらも穏やかな表情を浮かべる。まあ、ある程度、あきらめているので。親友だけではなくて、誰が相手でも、信じてもらえるわけもないので。
 幻聴としてあきらめればいいのに、親友はあきらめずに聞いてくる。
「で、何してるんだ?」
 窓の外を眺める。さんさんと降る日差しはたいてい平等に降り注ぐけれど、残念ながらすべての地表に届くわけでもないので、まあそれは結局仕方ないのだ。
 仕方がないから、答えた。仕方ないから、ため息は呑み込んだ。
「お医者さんごっことか」
「………あのひとも、男だったんだな」
 親友は深く頷いた。そこは決して頷くところではない。ちらり、と視線を今度はブロッコリーをもごもごとしている親友に向ける。ごはんをむぐむぐと飲み込んでから、こくん、と首をかしげた。
「僕がお医者さんだけどね?」
「え」
 間抜けな顔。悪くない。
「裸エプロンとか」
「うんうん」
 なんでそこは頷くんだ。
「あのひとがね」
「はっはっは」
 今度は笑うのか。
「セーラー服とか」
「王道だな」
 だからなんでそこだけ同意する。男ってみんなこんなか、と極論に走りそうになる。
「あのひとが着るんだけどね」
「う、うそだ!」
 慌てるのを見ながら、少し溜飲が下がった。
「あはははは」
「帝人さん?!否定がないけれど?!なぜに?!」
「うんうんうん」
「なにそのさわやかな笑顔!嘘っていうところだろ今は!っていうか今しかないだろ嘘だっていうときは!今日は残念ながらエイプリルフールじゃないんだぞ?!」
「臨也さんてかわいいひとだよね」
「う、わああああああ!だ、誰か!一緒に驚いてくれ!誰でもいい!」
 ゆまさきさーん、かりさわさーん!と窓に足をかけて叫ぶ親友は無駄に教室内の視線を集めているが、こんなじゃなくてもだいたい注目を集めるようなテンションの親友なので気にしないことにする。
「うん嘘だよ」
「わあああああ、て、え?」
 間抜けな顔。その二。
 それでは、正解。
「僕の服剥いてエプロン着けさせて、恥ずかしがる僕を見てにやにやにやにやしてます」
 うろたえていた親友は、それを聞いて胸をなでおろした。ちょっと臨也さんのにやにや顔が浮かんでイラッとしたが、まあそれよりも、今の親友の頭の中がどうなっているのか、ちょっと取り出して見てみたいなあとか考える。まあ、おおむね、この親友は愉快である。

「あ、あんしんし…………、って、できるか!!!」

 あはははは、と笑って、また、怒られた。