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どうにもならない

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椅子に腰掛けて明日の宿題をやっていたら、突然僕の双子の兄が飛びついてきた。首に。気管がつまって咽せる僕に目もくれず、おかしな兄は頬をすり寄せる。おかしいけれど、いつものことだった。



消えてしまいたいなあ。消えてしまいたい。このまま、ずっとふたりで眠るように、あの羊水の中でたった二人命を分かち合ってた時のように。こうして寄り添っていれば分かる心音は俺だけに聞こえていればいいのになあ。繋がればいい。溶けてしまえばいい。帝人が溶けてしまったら、それを飲み込んでそのまま静かに息を引き取るから。
そうしたなら、互いが互いで満たされたまま。最善なんてものは無いんだ。だってきっと誰も俺と帝人を一緒の箱に詰めてはくれないのだもの。俺はそれが吐き気がするくらいに嫌で苛ついて仕方ない。


長い長い独り言を僕の耳元で囁いた彼は、情緒不安定を表すように僕の肩に鼻を押しつける。手を繋いで自分と同じ血を遺伝子を持つ、双子の兄を抱き締めれば、帝人、と弱々しい声が響いた。性格は最低。最悪と言ってもいい。最低のくせして、常に最高を求め続ける異常者。彼が愛しているのはいつだって人間だった。そして僕だった。



「帝人だけでいいよ。帝人だけがいい。俺には帝人だけで、帝人には俺だけが一番いい。ねえ、俺の最愛の片割れさん。死んだら、許さないよ。死ぬくらいなら俺も連れて行って、そうして海に眠ろう。もしも帝人が先に死んだら、泣いて泣いて泣いて泣いて、俺の涙全部帝人にあげる。それが終わったら笑って帝人の周りあらかた片付けて、帝人を抱いたまま、海に眠るよ。他にはあげない」
「うわそれすごく嫌。死んでも臨也とふたりっきりなの、僕は」
「ひどい、帝人。俺はただでさえ今も我慢してるのに」
「頭がおかしい。というか僕は臨也だけじゃなくても生きていけるよ」
「俺は無理!いやだね!」
「本当勘弁して欲しいこの人」


「駄目だよ。舞流にも九瑠璃にもあげない。家族っていうのは怖い。俺が死んじゃったら、帝人と近しいのは俺以外の、しいて言うなら母さんだ。なんせ俺達を産んでくれた人なんだから。だから帝人、帝人が死ぬ時は俺も連れて行かなきゃ駄目だよ」
「そもそも僕は老衰予定だから」
「じゃあ俺も帝人の隣で老衰予定」

「………」

「なにその目」


臨也は早死にしそう。


「俺は帝人と生きるよ。生きて死んで、また君と生きる。神なんてものはさあ、別に信じちゃあいないけど。俺が生きていたいって思うのは帝人がいるからだし」

「それ口説いてるの?」

「どうとでも。とにかく俺は帝人が好きだよ。愛してる。ラブだね」
「よかったね。残念ながら僕はライク」
「大丈夫、俺はそんな帝人が大好きだからさ!」
「何が大丈夫なのか全く分からない」



こんな片割れでも、最悪で最低で人間として底辺だとしても。僕らは確かに繋がっていて言葉じゃなくても分かるんだから厄介だ。無駄口ばかりの、構ってちゃん加えて泣き虫。二人で一人だなんてことは言わない。だけど、互いが互いに特別で異常なのは事実。
きっと同じとまではいかないけれど、臨也が先に死んでしまったとしたなら僕だって後を追うくらいはするのだろう。


「あーもう、臨也どいて。僕もう寝る」

「俺も寝る」


高校生にもなるのに同じ部屋、同じベッド。それすら普通とはかけ離れているのに、今更抵抗も何もない。とりあえず、いつまでも僕から離れない臨也の横っ面を押しのけて、僕は宿題を閉じた。こうなった臨也が傍にいると、宿題が切り刻まれかねないから。本当に面倒くさい兄である。


ベッドに潜り込むと、すぐさま臨也が僕を抱き締めた。身長も声も、性格も。全てが違うけれど、たぶん一番深い所は一緒なんだろう。結局は僕だって臨也しかいないし、臨也にも僕しかいない。ひとまずそれだけで充分だ。充分すぎる。


臨也が何か囁いている声を無視して、僕は目を閉じた。


まだ僕には明日があるから。
まだ臨也には明日があるから。
互いの時間の猶予は恐らく人の一生くらいはあるのだから、急いて考えなくても良い。


作品名:どうにもならない 作家名:高良