如是我聞
そういう意味では、君のことも愛しているといってもいいかもね。
施術しながら喋る相手に、臨也は向き直る。
「ああ、君は愛してると言われると、心の底から嫌な顔をするね」
そういって目を細めて微笑んだ顔は、普段のそれとも、彼が愛する人に向ける表情とも違う、芯からの優しい笑顔だった。
臨也の、もっとも苦手な表情だ。
白い包帯がくるくると巻かれ、布地の影に笑顔がうもれて行く。
「だから、オレと君は似ているのかもしれないね」
包帯の向こうで光る眼差しには、悪戯っぽい色が宿る。
「……………」
観測者を気取るような口振りに、臨也は沈黙を貫く。
あの、街で。
池袋という、歪んだ日常と、滑り落ちるような非日常が交差する街で。
そこでしか証だて出来ない愛なんて。
それに囚われるなんて。
「………反吐が出るよ、新羅」
巻かれ終わった包帯越しに見る笑顔は、きっといつもの友人の顔。