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夕方の動物園

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2398年、晩秋。久々に晴れた休日ということもあってか、動物園は多くの観光客で賑わっていた。
「お父さん、早く早く!ぼく、ライオンが見たいんだ!」
「あ!ずるいよニール!ぼくはキリンが見たい!キリンが先だよ!」
同じ顔の少年二人が、自分が見たい動物を主張しながら駆けていく。
「こら、ニール、ライル。喧嘩するんじゃないよ」
父親らしき男性が、二人が駆けた分だけ離れた場所から優しく諌めた。
「エイミーは何が見たいの?」
母親らしき女性が、傍らにいる少女に尋ねた。少女は末っ子なのだろう、少年たちより更に幼い。
「エイミー、ペンギンがみたい!」
大きな目をキラキラさせながら、少女は満面の笑みで答えた。妹のこの表情を見てしまっては、少年たちはもう何も言えなかった。
「よし、ペンギンを見に行こう!」
「おいで、エイミー」
ニールとライルはエイミーの小さな手を片方ずつぎゅっと掴み、園内地図の前まで引っ張って行った。



時間はあっという間に過ぎていき、もう夕方だ。普通、動物園は夕方までだが、クリスマスも近い晩秋から新年までこの動物園はイルミネーションされ、大人のデートスポットとして人気を博している。エイミーのお願いで、ディランディ一家も少しだけイルミネーションを見てから帰ることになった。
まだ昼の青を空の端に残す中、イルミネーションが一斉に点灯した。
「わああ、きれーい!」
赤い夕日に負けない明るさに、エイミーが感嘆の声を上げる。
「あ、あっちのやつゾウの形してるよ!」
ライルが指差した方向には、電飾で彩られた象のオブジェがあった。ライルはエイミーの手を引き、象目掛けて駆け出した。ニールもそれに続き、もう少しで象の前にたどり着くところで、視界の端を何かが掠めた。
大勢の人がいる中で、何故か、それがニールの意識を捉えた。それを目で追って振り返ると、赤いストールが尾鰭のようにふわりと揺れていた。
「―――――――っ!」
何かが喉元までせり上がってきたけれど、言葉にはならなかった。すれ違ったその人は、すぐに雑踏に紛れて分からなくなってしまった。
「ニール、どうかしたの?」
追い付いてきた母親が心配そうに尋ねたが、ニールは何も答えられなかった。



よかった、と刹那は思った。あれはロックオンだ。いや、ニールと呼ぶべきだろう。ライルもいた。彼らの妹も、両親も、ちゃんと傍にいた。また家族として生まれてきたのだ。
どうか、今度こそ幸せに。彼らの幸福が何者にも脅かされませんように。
作品名:夕方の動物園 作家名:arisa