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追想

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 あの人の影が声が、今も私を責め立てている。

 瞳を伏せる。思い出すのはあの人の背中ばかりだ。赤い血溜まりと、吹き抜けていく風。錆びた鉄の臭いが鼻をつく。そこには一人が男っていた。赤い衣を纏った、峻烈でいて、ひどく愛おしい人。父上。呼ぶ。けれど父上は振り返らない。その背が、ただ酷く私を責め立てるだけだ。声が聞こえる。咎められているのだ。ああ、父上。貴方が望むのならば、私は決して立ち止まることなど致しません。貴方の為に。全ては、愛する父上の為に。貴方の為ならば、剣を取り、振るい、血を浴びることすら厭わない。だからどうか、どうか。いつまでもそこにいてくれますように。ただそこに在って、私を責め立ててくれますように。父上。それだけが願いなのだと告げれば、貴方は笑ってくださるでしょうか。馬鹿な奴だと、そう言って笑って欲しいと思う私は、やはり愚かなのかもしれない。父上。今はもう、貴方の声は聞こえないというのに。脳裏に焼き付いているのはただ凛と立つ貴方の後ろ姿だけ。赤く染まった衣と、血に塗れた剣。決して私を振り返らない、貴方の姿だけが、確かな証として其処に在るだけ。


 私は今も、焦がれてばかりいる。




090506
作品名:追想 作家名:ましゅう