僕らの恋愛戦争~どうもモブ男です~
他人の恋路ほど小気味良いものはない。
私は池袋のとある会社に勤める会社員である。
名前はプライバシー保護の為伏せさせていただこう。
といっても、私に興味を持つ人間などそういない。
何せ私は没個性。
主役や脇役を引きたてる通行人もしくはエキストラBと言ったところだ。
別に自分を卑下しているつもりは毛頭ない。
むしろ私はこの立場を楽しんでいる。
何せ、そのおかげでヘタな恋愛ドラマよりも遥かに面白い、人間模様が間近で見れる機会を与えてもらったのだから。
まあ、私のことはこのへんで置いといて。
私が住む池袋の名物でも紹介しようじゃないか。
とはいっても周知のことだと思うが、あらためて。
ここ池袋には有名人がいる。
それは芸能人とか政治家とかそういった類ではなく、世間的には一般人の有名人。
いや、一般人で括ってしまったら、その他一般があまりにも霞んでしまう。
まあ、とにかくそんな人間がいるのだ。
一人は知る人ぞ知る、池袋最強の喧嘩人形、平和島静雄。
冗談みたいな名前だが、本名らしい。
そして、名は体を現すを尽く裏切った人間だ。
彼が一度怒ると池袋が廃墟と化す。
語弊じゃない。事実だ。
ゴミ箱。標識。信号機。はては自販機。
日常に組み込まれた風景のものが、彼の手にかかれば武器となり、宙を舞う。
そう舞うのだ。子供が放り投げるボールのように。
池袋で生きていきたければ、まず平和島静雄を怒らせないこと。
それが池袋の常識だ。
もう一人は、かつて池袋に住みつき、今は新宿を縄張りとする情報屋、折原臨也。
奇抜な名前と、漫画か小説に出てくるような肩書きを持つ男は、やはり一般とは程遠い、むしろ対極に位置する男だ。
平和島静雄が最強ならば、この男は最悪だろう。
そのぐらい人としてどこか歪みまくっている・・・・らしい。
「人LOVE!」が彼のスローガンの辺りその認識は間違いではないはずだ。
正直お近づきになりたくない男ナンバー1だと思う。
だが、無駄に顔も良く口も達者な彼に惑わされる人間は今も絶えない。
男は顔じゃないと私は主張したい。
・・・ごほん、話が逸れたが、他にも有名人は居る。
サイモンというロシア人や、首無しライダーなどなど。
都会の魔窟らしく、どれもこれも日常とは一線を引いている存在ばかりだ。
しかし、私はあえて一人紹介させていただこう。
その名も、竜ヶ峰帝人。
名前だけなら、前に述べた2人に引けをとらないだろうが、彼女は、そう竜ヶ峰帝人は現役女子高校生だ、容姿は至って普通・・・より可愛い、ベビーフェイスが魅力の、性格も都会の子に比べてスレてなく、礼儀正しいまさしく娘にしたい子ナンバー1な少女だ。
平和島静雄のように怪力の持ち主ではなく、折原臨也のように実は人の身を被った悪魔というわけでもない、ごくごく普通の少女を推薦したい理由は一つ。
竜ヶ峰帝人が、平和島静雄と折原臨也の想い人ということに他ならない。
そう、善良で可愛い少女は何と、池袋最強と最悪に心を寄せられているのだ。
驚くのはまだ早い。
少女はそんな彼らの愛に一片たりとも気付いていないのだ。
それはもうひとっかけらも。
つまり図にしてみると【平和島静雄→竜ヶ峰帝人←折原臨也】といったところか。
何とも素晴らしく恐ろしいサンドウィッチである。
・・・・なぜそんなことを所詮エキストラBの私が知ってるかって?
そんなの2人の男が少女に対してベクトルを向けているのがあからさまにわかるからだ。
私が知る話では、平和島静雄がしつこいナンパ野郎に纏わりつかれていた少女をその拳でもって助け出し「こいつに手出したらただじゃおかねぇ!」と屍累々の中啖呵を切ったこととか、折原臨也が少女のバイト先に足繁く通い、バイト中の少女をそれはもうこちらが呆れるというは恥ずかしくなるような甘い笑みで構ったりとか、まあそのぐらいだが、それだけで充分だろう。
・・・・そこまであからさまなのに少女はどうして気付かないかだって?
やれやれ、そんなの少女が人一倍鈍いからに決まっているだろう。
少女の鈍さはもう神がかっていて、「付き合ってくれ!」「いいですよ、どこに行くんですか?」とベタかつ実際はありえない勘違いを素でするくらいの鈍さだ。
しかも、その鈍さは少女の思い込みに拍車をかけている。
曰く、「あんな大人でかっこいいひとたちがちんくしゃな僕を恋愛対象にするわけない」と「都会の男って皆こうなのか」などなど。
何とも愉快な・・・失礼、清々しいほどの誤解だ。
そんな少女の周りも周りで、2人の男を応援するよりも妨害し隊という状態なので、少女の誤解を正すものは一人としていない。
しかし、2人はそれでも少女に対する恋心を諦める様子も無く、涙ぐましい努力と信頼の積み重ねをしている。
同じ男として、そこらへん親近感が湧きはする。
所詮、池袋最強も最悪も、一人の男で人間だということだ。
やはり、そう思わせてしまう竜ヶ峰帝人は凄いと私はあらためて思う。
というわけで、私が竜ヶ峰帝人という少女を池袋名物にしたい理由がおわかりいただけただろうか。
喧嘩人形と、情報屋を、ある意味手玉に取る少女は、真実最強ではないか。
少女がもしどこぞの誰かに危害を加えられたら、私は同情はしないが危害を加えた相手を不憫に思うだろう。
待っているのは地獄よりも辛い現実なのだから。
まあつまりは、竜ヶ峰帝人に興味があるならそこを踏まえろというわけだ。
お勧めは私のようにエキストラとなって、池袋の雑踏の中からそのドラマよりも小気味良い恋愛模様を傍観することだ。
下手に登場人物になってしまったら命の保障はない。まじで。
それでもいいなら、私は止めはしないが。
何てたって私はエキストラB。
何の権限もない、ただの引き立て役なのだから。
さて、私は会社に戻るとしよう。
運が良ければ、帰宅時にでも彼らを見かけるかもしれない。
娯楽とは聞こえが悪いが、人生にはスパイスも必要だろう。
ちなみに私の目下の興味はもちろん、少女がどちらの手を取るかだ。
もしくはどちらの手も取らないか。
まあ、そこはあの2人が許すはずもないと思うが。
君はどう思う?
私は池袋のとある会社に勤める会社員である。
名前はプライバシー保護の為伏せさせていただこう。
といっても、私に興味を持つ人間などそういない。
何せ私は没個性。
主役や脇役を引きたてる通行人もしくはエキストラBと言ったところだ。
別に自分を卑下しているつもりは毛頭ない。
むしろ私はこの立場を楽しんでいる。
何せ、そのおかげでヘタな恋愛ドラマよりも遥かに面白い、人間模様が間近で見れる機会を与えてもらったのだから。
まあ、私のことはこのへんで置いといて。
私が住む池袋の名物でも紹介しようじゃないか。
とはいっても周知のことだと思うが、あらためて。
ここ池袋には有名人がいる。
それは芸能人とか政治家とかそういった類ではなく、世間的には一般人の有名人。
いや、一般人で括ってしまったら、その他一般があまりにも霞んでしまう。
まあ、とにかくそんな人間がいるのだ。
一人は知る人ぞ知る、池袋最強の喧嘩人形、平和島静雄。
冗談みたいな名前だが、本名らしい。
そして、名は体を現すを尽く裏切った人間だ。
彼が一度怒ると池袋が廃墟と化す。
語弊じゃない。事実だ。
ゴミ箱。標識。信号機。はては自販機。
日常に組み込まれた風景のものが、彼の手にかかれば武器となり、宙を舞う。
そう舞うのだ。子供が放り投げるボールのように。
池袋で生きていきたければ、まず平和島静雄を怒らせないこと。
それが池袋の常識だ。
もう一人は、かつて池袋に住みつき、今は新宿を縄張りとする情報屋、折原臨也。
奇抜な名前と、漫画か小説に出てくるような肩書きを持つ男は、やはり一般とは程遠い、むしろ対極に位置する男だ。
平和島静雄が最強ならば、この男は最悪だろう。
そのぐらい人としてどこか歪みまくっている・・・・らしい。
「人LOVE!」が彼のスローガンの辺りその認識は間違いではないはずだ。
正直お近づきになりたくない男ナンバー1だと思う。
だが、無駄に顔も良く口も達者な彼に惑わされる人間は今も絶えない。
男は顔じゃないと私は主張したい。
・・・ごほん、話が逸れたが、他にも有名人は居る。
サイモンというロシア人や、首無しライダーなどなど。
都会の魔窟らしく、どれもこれも日常とは一線を引いている存在ばかりだ。
しかし、私はあえて一人紹介させていただこう。
その名も、竜ヶ峰帝人。
名前だけなら、前に述べた2人に引けをとらないだろうが、彼女は、そう竜ヶ峰帝人は現役女子高校生だ、容姿は至って普通・・・より可愛い、ベビーフェイスが魅力の、性格も都会の子に比べてスレてなく、礼儀正しいまさしく娘にしたい子ナンバー1な少女だ。
平和島静雄のように怪力の持ち主ではなく、折原臨也のように実は人の身を被った悪魔というわけでもない、ごくごく普通の少女を推薦したい理由は一つ。
竜ヶ峰帝人が、平和島静雄と折原臨也の想い人ということに他ならない。
そう、善良で可愛い少女は何と、池袋最強と最悪に心を寄せられているのだ。
驚くのはまだ早い。
少女はそんな彼らの愛に一片たりとも気付いていないのだ。
それはもうひとっかけらも。
つまり図にしてみると【平和島静雄→竜ヶ峰帝人←折原臨也】といったところか。
何とも素晴らしく恐ろしいサンドウィッチである。
・・・・なぜそんなことを所詮エキストラBの私が知ってるかって?
そんなの2人の男が少女に対してベクトルを向けているのがあからさまにわかるからだ。
私が知る話では、平和島静雄がしつこいナンパ野郎に纏わりつかれていた少女をその拳でもって助け出し「こいつに手出したらただじゃおかねぇ!」と屍累々の中啖呵を切ったこととか、折原臨也が少女のバイト先に足繁く通い、バイト中の少女をそれはもうこちらが呆れるというは恥ずかしくなるような甘い笑みで構ったりとか、まあそのぐらいだが、それだけで充分だろう。
・・・・そこまであからさまなのに少女はどうして気付かないかだって?
やれやれ、そんなの少女が人一倍鈍いからに決まっているだろう。
少女の鈍さはもう神がかっていて、「付き合ってくれ!」「いいですよ、どこに行くんですか?」とベタかつ実際はありえない勘違いを素でするくらいの鈍さだ。
しかも、その鈍さは少女の思い込みに拍車をかけている。
曰く、「あんな大人でかっこいいひとたちがちんくしゃな僕を恋愛対象にするわけない」と「都会の男って皆こうなのか」などなど。
何とも愉快な・・・失礼、清々しいほどの誤解だ。
そんな少女の周りも周りで、2人の男を応援するよりも妨害し隊という状態なので、少女の誤解を正すものは一人としていない。
しかし、2人はそれでも少女に対する恋心を諦める様子も無く、涙ぐましい努力と信頼の積み重ねをしている。
同じ男として、そこらへん親近感が湧きはする。
所詮、池袋最強も最悪も、一人の男で人間だということだ。
やはり、そう思わせてしまう竜ヶ峰帝人は凄いと私はあらためて思う。
というわけで、私が竜ヶ峰帝人という少女を池袋名物にしたい理由がおわかりいただけただろうか。
喧嘩人形と、情報屋を、ある意味手玉に取る少女は、真実最強ではないか。
少女がもしどこぞの誰かに危害を加えられたら、私は同情はしないが危害を加えた相手を不憫に思うだろう。
待っているのは地獄よりも辛い現実なのだから。
まあつまりは、竜ヶ峰帝人に興味があるならそこを踏まえろというわけだ。
お勧めは私のようにエキストラとなって、池袋の雑踏の中からそのドラマよりも小気味良い恋愛模様を傍観することだ。
下手に登場人物になってしまったら命の保障はない。まじで。
それでもいいなら、私は止めはしないが。
何てたって私はエキストラB。
何の権限もない、ただの引き立て役なのだから。
さて、私は会社に戻るとしよう。
運が良ければ、帰宅時にでも彼らを見かけるかもしれない。
娯楽とは聞こえが悪いが、人生にはスパイスも必要だろう。
ちなみに私の目下の興味はもちろん、少女がどちらの手を取るかだ。
もしくはどちらの手も取らないか。
まあ、そこはあの2人が許すはずもないと思うが。
君はどう思う?
作品名:僕らの恋愛戦争~どうもモブ男です~ 作家名:いの