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女の子はでりけーとなんです

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帝人は最初から重かったわけではない。
でも中学3年からだんだん辛くなって、今じゃ立派に生理痛に悩まされる女子になっている。
今月も例に漏れず。





「そんなに辛いの?」
「辛い、というか、きつい?いや、痛い?あ、やっぱ辛いかも」
「なるほど、めんどくさいんだね」
上等なソファで行儀悪く横たわり、うんうん唸る帝人を興味深そうに、でも少しだけ戸惑い気味に見つめるのは、8つ年上の知り合い(仮)だ。
「知り合いに(仮)はいらないだろ」
「心読まないでください、プライバシーの侵害です。知り合い認定したくなくてもしなきゃいけない僕の切実な想いを踏みにじらないでください」
「君だって俺に告白したくせに、俺の返事踏みにじってるだろ」
「踏みにじってません人聞きの悪い。断固として拒絶してるんです」
「同じ意味でしょそれ・・・・」
頭上でため息を吐かれたが、帝人は無視をした。
実を言うと、帝人は臨也に告白をしていた。臨也が帝人に、ではなく、帝人が臨也に、だ。ここ重要。
しかしそれはシチュとかムードとか何それおいしいの?な状態での告白だったと帝人は振り返る。つまりは成り行きなのだ。
臨也お得意の人間愛論を事細かに演説され、それを右から左へと聞き流していた帝人は最後に臨也が「人も俺を愛するべきだろう!」と締めとして告げた言葉に、「少なくとも僕は好きですよ、臨也さんのこと」と返したのが帝人曰く告白だ。
とりあえず硬直した臨也というレアなものを目撃した帝人は写メった。
そして帝人はこうも臨也に告げた。
「あ、返事はいいです。というか聞きたくないです。結果がどうであれ僕の不幸が始まりそうなので」
それ以降、帝人は臨也の返事を素気無く蹴飛ばしているのだ。
なのに、何故帝人が臨也のマンションにいるかというと、答えは簡単だ。

拉致られた。

シンプルすぎて涙が出てくる。でも泣かない。女の子だもん。
とはいっても、一応は好きな人の部屋ということもあって多少気分が高揚するも、今は腹部の痛みにすぐに降下した。
気休めだろうけども丸くなって痛みをやりすごす。
閉じた帝人の瞼に何かが触れ、ふっと薄目を開けると、男の人にしては細い、でも節ばった長い指が眸の縁をなぞるように触れていた。
くすぐったかったけど、止めてというには惜しいほど優しくて、帝人はもう一度瞼を閉じる。
その際、今度は笑い声が落ちてきたけどやっぱり無視をした。
頬が熱いのはきっと気のせいだ。
「女の子は大変だねぇ」
「・・・・何か今更な響きですね。臨也さんなら引く手数多で女の子のことよくわかってるかと思ってました」
「そう?ああでもこんなめんどくさそうな時は相手してなかったからわかんないや」
「最低です」
「あれ、こういう時は『わあ、じゃあ僕はめんどくささも許容できる特別な人間なんですね!』って喜ぶところじゃない?」
「僕にそうゆうのを求めるのはお門違いです」
求めるなら、臨也さんが愛している人間に求めてください。
捻くれ捩じりに捩れて修復不可能な状態の男を神と崇めたてる信者の子とかにでも、と帝人が言うと臨也は「やきもち?」と返した。
とりあえず「死んでください」と応えた。
うんうん唸る帝人を暫く眺めていた臨也だが、何かを思いついたのかにやりと笑ってみせた。
あいにく帝人は瞼を硬く閉じていたので、気付かなかったが。
「帝人君、ちょっとごめんね」
「え、っわわわ!」
言葉と共に浮遊感が帝人を襲う。
細いくせしてどこにそんな力があるのかと、臨也は帝人の身体をひょいと抱き上げて、そのまま帝人が寝転がっていたソファに腰掛けた。
帝人を横抱きしたまま。
「んな?!ちょっと臨也さん」
「はいはーい、暴れるとお腹痛くなるよー」
「っ、誰のせいだと!」
「俺」
「~~~ッッ」
何だこの人なんだこのひと!
帝人が抗議の言葉を上げようと口を開いたのを見計らったように抱きしめてきた。
しつこいようだが、横抱きのまま。
「!!」
ぎうううううっと音がしそうなほど、強くがっちり押しつけるように抱きしめられる。
帝人は生理痛に苛まれていたことを一瞬忘れ、反射的にもがこうとしたがそれも無理だった。
「い、臨也さん!」
「はー、やわっこい。帝人君細いし華奢だし余分な肉付いてないけど、やっぱり女の子らしく柔らかいね」
「セクハラです!」
「愛のある接触はセクハラと認定されません」
「一方通行だと痴漢ですよ!」
「帝人君は俺を好き。俺は帝人君が好き。はい、通じあったー。両思いだね」
さらりと今まで避けに避けた応えを胡散臭い(帝人談)笑顔で返され、帝人は言葉を失った。
「・・・・・・・・・・い、」
「胃?」
「臨也さんの馬鹿ぁぁぁ!!」
「・・・・・帝人君、耳元で叫ばれると鼓膜が、」
「そんなのどうでもいいです!」
「どうでもよくない。耳が悪くなって、帝人君の可愛い声が拾えなくなったら困る」
「うるさいです!」
帝人は嘆いた。
「こんな性格破綻者好きになったっていうんだけでも僕の人生終わったのに、これで恋人なんかになったら僕、よくわからないどっかの組織とか殺し屋とか臨也信者なんてふざけた名前付いてる女の子とかに命狙われるー!!」
非日常はウェルカムだけども恋愛は普通がいいのに!
その姿は好きになったひとと両思いになった女子の反応ではなかったと後に臨也は語った。
「・・・・・とりあえず帝人君が俺を誤解していることはわかった」
「誤解じゃなくて本当のことですよね」
「・・・そこで冷静に切り返されるとすごく傷付くんだけど」
「ううう、僕の人生お先真っ暗・・・・・・お腹痛い」
「ああもう、とりあえず今日はもう寝な。両思いの儀式は生理が終わってからね」
「儀式って何それこわい」
「恋人とやる愛の、「いいです言わなくていいです」
ぶり返してきた痛みと、もうどうでもいいという諦めで帝人が全身の力を抜くと、臨也は嬉々として僅かに空いた隙間すらくっつけて、またぎううっと抱きしめてきた。
「長かったなぁ。弱った帝人君ならガード緩くてつけ込めるかと思い付いた俺天才」
「・・・確信犯も犯罪として立証できればいいのに」
「何それひどい」
けらけらと笑う臨也の顔は、初めて見ると言っていいぐらい無邪気で、なんというか、すごく嬉しそうで、それを薄目で見た帝人は、この展開に全然納得もしていないけれど、まあいいかと抱きしめられて高まる温もりによって忍び寄ってきた睡魔にぽつりと呟いた。






(とりあえず生理が終わったら、セルティさんか静雄さんとこに逃げ込もう)