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ペンギンの気持ち

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――――もしよかったら。
 そう言って差し出されたのは、手の平サイズのぬいぐるみのキーホルダー。
「……これは?」
「ん?ペンギンのぬいぐるみ」
「それは見れば分かる」
 自分が訊きたいのは、何故風丸がいきなりこれを渡してくるのかということだ。
 偶にコイツは、分かっていてわざと答えを外すようなことがある。
(全く持って性質が悪い……)
 こちらの反応を愉しんでいるのだと。睨んだところで笑われるだけだと分かっていても、つい整った顔をじろりと見上げてしまう。向こうの方が背が高いというコトも、自分にとっては面白くない。
 やはり楽しげに弧を描いた唇で、風丸はあくまで軽い調子を崩さず口を開く。
「鬼道、好きだろ?ペンギン」
「は……?」
「ゲームセンターのクレーンゲームが新しくなってたから。だから、折角だしと思ってさ」
「……普通に買ったほうが安いような気がするんだか」
「それはあれ。気分?」
「何だそれは……」
 確か、風丸は特別クレーンゲームが得意という訳では無かったはずで。以前、松野たちとゲームセンターに行った時のことを思い起こしつつ、果たして一体何枚の百円硬貨分なのか分からないぬいぐるみの頭を撫でてみる。
 特別手触りがいいわけではないが、小さなプラスティックの目や全体的に丸いフォルムは愛嬌があると言えなくも無い。
「気に入ったか?」
「……」
 だが、にこにこと尋ねてくる相手に、素直に頷いてやるのは悔しくて……。
 ようやく言えた台詞が「貰っておいてやる」だった自分に、後で落ち込む羽目になった。
 
 《終わり》
ありがとうはまた今度
作品名:ペンギンの気持ち 作家名:川谷圭