手と手
「プライベートでは久しぶりだね、日本くん。ここは冬でもそんなに寒くないんだね…、うらやましいなぁ…。」
「お久しぶりです、ロシアさん。そんなに寒くないだなんて、私は寒くて凍えてしまいそうですよ。さぁ、中へどうぞ」
そんな会話をぼちぼちしつつ、ロシアさんを家の中へ招き入れる。
昔の私たちの関係からすれば考えられないことだ。
日本の冬など、彼からすればまだぬるいものなのだろうが私からすればそんなに長く外にはいたくない。
「はぁ、やっぱり中はあったかいねえ…。あ、ぽちくんも久しぶり〜」
「ああ!ぽちくんがおびえています…!」
「ええ〜大丈夫だよねー?ぽちくんー」
「そんなこと言いますけどね、見てくださいこのぽちくんの潤んだ目と震える尻尾を…」
居間につき、早速ぽちくんをひざに乗せてこたつに足をいれる。ぽちくんは炬燵布団の上で我慢ですよ。
ロシアさんも炬燵に足をいれて、私の足とぶつかる。
「わあ、足がくっついちゃうねー。日本くんは足が冷たいね、手も冷たいの?」
いきなりロシアさんに手を握られた、ロシアさんの手はやたらあたたかくて、私の手の冷たさが強調される。
握り返してみたものの、ロシアさんの反応はない。私の手をじっと見ている。
「私の手がどうかしましたか…?」
「ううん…、本当日本くんの手って冷たいね」
「冷たくて悪かったですね、貴方の手があったかすぎるんですよ」
「でも、綺麗な手だよ」
自然にでそんなことを言うものだから驚いてしまった。
「僕の手とは大違いだ。うらやましいなぁ」
確かにロシアさんの手はごつごつしていて大きい。
私の手も日本人としては大きいほうだと思っていたけれど、ロシアさんの手と比べれば華奢に見える。
「ロシアさんの手も素敵ですよ」
「それ、日本くんの得意な社交辞令?それとも本当に思ってる?」
ロシアさんの少しむくれた顔がたまらなく可愛くて、つい意地悪をしたくなってしまうけれど、ここは我慢。
本当ですよ、と一言返事をする。
「まぁいいや、別に。日本くんはもっとあったかくなるべきだと思うよ…」
「そうですか、助言ありがとうございます。貴方の手があたたかすぎるんですよ…」
自分からロシアさんの手を撫でてみる。大きくて綺麗な手だと素直にそう思う、愛しい人の手だと尚更。
「あ、そうだ!僕が日本くんの手をあたためてあげるよ、それでいいと思わない?」
「…それはロシアさんお得意の、ロシア領になりなよ、ってやつですか」
私自身、そんなこと構わないけれど、国という存在上そんなことはできない。
なんてまじめに考えてみたけれど、ロシアさんは少し悩んだあとこう言った。
「日本くんの近くに居られるときはずっと、かな…?」
まさかそんなことをロシアさんが言うなんて思ってもみなかった。
その一言のおかげでやたらロシアさんが可愛く思えて、私は手を握る力を少し強めた。