Sisters' LOVE!!
「あー!静雄さんだー!」
見た目と中身が裏腹な双子、折原舞流と折原九瑠璃。あの折原臨也の妹である。
そんな双子に偶然出会った静雄はあからさまにため息をついた。
双子はそんな静雄の様子は全く気にせず、静雄に駆け寄り、抱きつくであろう寸前で動きを止めた。
「なんだよ…」
静雄はいつもと違う双子の様子に少し戸惑いながら言った。
「抱きつきたいわけじゃなかったんだった!今日は静雄さんに聞きたいことがあってきたんだよ!」
「兄(兄について)…訊(ききたいことがある)……」
「は?聞きたいこと…?」
静雄は訳のわからぬまま双子に連れられ、近くのファストフード店へ入った。
「静雄さんとゆっくり話がしたかったから!って、静雄さんシェイク好きだよね…」
「甘(甘党なんですね)…」
双子2人はポテトをもぐもぐと頬張りながら話を続けた。
「…訊(早く聞いて)…」
「ああ、ごめんごめん今聞く!で、単刀直入に聞くんだけど」
ずいっと身を乗り出して話を切り出す舞流。
九瑠璃も身を乗り出さないながらも視線はしっかり静雄を捕らえて離さない。
「静雄さんとイザ兄って付き合ってるの?」
!!?
静雄は思わず飲んでいたバニラシェイクを咽そうになった。
なんでそういうことになってるんだ!とか、誰情報だ!とか、そんなことない!絶対ない!とか言いたいことがありすぎて言葉にならない、と静雄は口をパクパクさせた。
「え、なにすぐ答えられないってことは、やっぱり、やっぱり!?そんなことだろうと思ったんだぁ〜!
だってイザ兄も昔から静雄さんのことばっか話してたし!ふーん!え、どこまで?どこまでいったの?」
「…黙(ちょっと黙って)…」
舞流はいきなり目を輝かせ始めたかと思うと、ますます静雄のほうへ身を乗り出し椅子の上に立つような形になった。
九瑠璃は舞流のその様子に呆れつつ、静雄に視線を合わせたままだ。
「いやいや、え、おまえら、それどこ情報だよ!!」
静雄はキレそうになるのをどうにか我慢して、バニラシェイクを飲み、落ち着こうとした。
が、効果はなかった。
確かに臨也と静雄はいわゆる恋人同士、という関係だが、この双子にはそのことは言ってないはずだった。
「どこ情報、っていうことは本当なんだー」
にやにやしながら舞流は言った。先ほどの質問はいわゆる誘導尋問だったらしい。
「あっ、ばかっ!お前かまかけやがったな…」
それに気付いた静雄は勢いでバニラシェイクのカップを握りつぶした。
幸いにも中身はもう空だったらしくカップは小さな塊となり静雄の手のひらに収まっていた。
「釣(やっぱり静雄さん釣れた)…」
珍しく姉の九瑠璃がくすりと笑った。
そして、真剣な眼差しで静雄を見つめた。
「兄…寂…(ああ見えて兄は寂しがりやなんです)、宜…(兄をよろしくお願いします)」
九瑠璃はぺこり、と頭を下げた。
お前の兄も妹もそれくらい常識あればいいのにな、と静雄は思った。
「クル姉は重いなあ〜…。で、静雄さんとイザ兄ってどっちがタチでネコなの?もうバックバージンは奪われちゃったの?奪ったの?」
ついこの前まで中学生だった女の子の言うことではないような台詞がつらつらと舞流の口から流れ出る。
ここまで来ると静雄もため息をつくしかない。
九瑠璃は、特にあわてた様子もない、いつもどおりといったところなのだろう。
「…なんで言わなきゃなんだ「あ!でもイザ兄しょっちゅう静雄さん押し倒したいとか言ってたから静雄さんネコでしょ!」
びしっと静雄を指差して舞流は言った。
静雄も静雄で否定は出来ないので口を閉ざすだけだった。
「確かに静雄さん、幽平さんに似てるし…。うんうん、わかる」
「解…(私も理解した)」
うんうん、と九瑠璃と舞流は大げさに頷く。
静雄は顔を赤らめて2人をにらむことしか出来なかった。
「家でもそんなこと言ってんのかお前らの兄貴は…」
「うん!あ、多分もうそろそろイザ兄ここ来るかも」
舞流はケータイをチェックしながら元気よく答えた。
「は…?なんで…?」
「イザ兄と静雄さんの関係も明らかになったことだし!ここは若い2人に任せて〜!行こっ、クル姉!」
よくお見合いの席などにいるお節介な母親のような台詞を言いながら舞流は九瑠璃を連れてファストフード店を出て行った。
「金…置…(お金、ここ置いときますね、じゃあまた)」
「ああ、もう…。どうしろってんだよ…」
静雄は熱くなった頬を押さえながら、入り口から見知った顔が出てくるのを待つことにした。
そのあと、双子と静雄の会話の一部始終を聞いていて、やっと認めてくれたね!と舞い上がっている臨也が静雄のところを訪れるのはまた別の話。
作品名:Sisters' LOVE!! 作家名:藤村