Dis-interested
それは彼を賞賛する言葉ではなく。
いつか世界は、等しくなるのでしょう。あなたの示すまま。
「エントロピーの法則だねえ?」
あなたの望まぬまま。
大理石の彫像のような美しい顔とそこに浮かぶ柔らかな表情には、老若男女問わず目を奪われるというのに、当の本人が我を忘れるほどに何かに夢中になるところを、もう10年にも及ぼうという彼との関わりの中で私は一度も見たことがなかった。戦争の指揮の最中であっても、それは変わらない。 ああそうだわ、恐慌状態となったことならたった一度。あの行政特区日本の惨劇のとき。 後ろで控えていた私は、画面の向こうの凄惨な出来事よりも彼自身の狼狽をよく覚えている。
「カノン、少しいい話をしようか?君はどうして彼が僕たちみたいなのを傍に置いていると思う?君曰く、変わり者 のさ。彼の示す世界には、存在の必要がないものだろう?
僕はこう考えているよ。僕らは僕らを生かすために、世界と己に折り合いをつけた。
僕らは僕らにとって、完全な合理主義者だ。
彼の価値観の中では彼の示す世界を阻害しない範囲での、そういった『合理主義者』こそが、ある意味で大切で、制御しきれない異物で、 だからこそ好ましいと考えているんじゃないかってね。実直だが、派手なものが嫌いな人じゃないからね。
彼のシンパはたくさんいるけれど、彼の『興味を引く』のは常に僕らのような存在だろう?僕らは完璧なる皇子様の持つ、希少かつ大いなる矛盾点というわけ!
均質なる世界の彩りとしての僕ら!
君はこれをどう考える?」
「いやねロイド。慰めてるの?それに人間観察なんてらしくないわよ。」
「僕にも彼は興味深いよお?」
「お前の言うことなんて当てにはならないけど。」
無私の人の偏りと言う。それはまるで好意のようねと笑った。
2008/12/10
作品名:Dis-interested 作家名:川木