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【サンプル】オノマトペ

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「わぁ! すっごくきれいですぅ!」
声と共に跳ねたスカートの裾の際どさに思わず手を伸ばすと、押さえた布地は見た目の軽やかさに反して思いの外厚かった。僅かに覗いた太股の際の質素な黒のスパッツの強かさに苦笑しながら、しかし穿いていたからと言って問題が解決されるのかと言われれば否ではないだろうかと考える。スパッツとてこの用途では下着の一種に違いない。一方、当の本人は回避された下着の危機にも気付かずにテーブルから身を乗り出して、向かいの席に座るアニュー・リターナーの手元を熱心に眺めている。(「きらきら」)


一番座り心地が良いのはニールの膝だ。あぐらをかくと膝と膝の間のそこは一つの乗り物のようで、丸まりながらすっぽりと収まると決まってニールの匂いがするので、ついぐるぐると喉を鳴らしてしまう。手持ち無沙汰な手の平に頬を摺り寄せてねだれば、頭や耳の後ろ、顎から首にかけて、背骨を辿る線、その他好きなところを順番に優しく掻いてくれる。それが気持ち良くて好きなので、ティエリアは空いている限りニールの膝を選ぶものだから、フェルトとの取り合いもしばしばのことである。ニールの膝はソファのように柔らかくはないけれど、とても寝心地が良くて、座り込んだが最後ティエリアはそこでうたた寝すらしてしまう。(「ぐるぐる」)


もう少しで互いの膝が触れそうな距離でただじっと彼に手を握られているのは、思えば奇妙な心地がした。彼と自分はただ、ガンダムマイスター同士であるだけの筈だけれど、まるで秘密めいた特別な糸で繋ぎ合っているかのように二人きりの広い部屋の端でくっついている。
ロックオン・ストラトスはいたく楽しげな様子だった。鼻歌までも耳朶を掠め、ティエリアは今更のように場違いな気分に陥る。(ロックオンは鼻歌もそれなりに上手くて様になるので、どこか腹立たしい)ぱちんぱちん、と音を立てるたびに剥落していく自分をティエリアは酷く惜しいような、けれど早く捨ててしまいたくてもどかしいような気分で見つめる。指先を伝う振動に身体の内側がぞわぞわと掻き立てられて悟られまいと身体を固めても、一番敏感な部分は既にロックオンの手袋をはめた指に包まれてしまっているので、大体のところは知られてしまっているようなのだった。(「ぱちんぱちん」)


大きな窓の半分ほどが壁際の棚の脇から覗いていて、黄ばんだクリーム色のカーテンが最大に開けられた間から外にこぼれ出ていた。和らげられた日が嵐のような床を丁寧に撫で上げている。夏の午後の風は時折しみつく埃と黴のにおいを掻き混ぜるけれど、室温はやはり暑いままでフェルトは伝い降りていく汗が背骨の窪みから徐々に外れていくのを覚える。
棚の一つに背を預けて座り込み顔を俯けているのは、一人の少年であった。さらさらと音の立ちそうな髪は肩口の辺りまで伸びていてまるで少女だけれど、フェルトが彼が彼であることを辿れた所以は、少年が男子の夏服を着用していること、そして、彼からはどんな少女からも匂い立つ独特の柔らかな線が見出せないことだった。(「ざわり」)