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逆転

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(・・・さん、・・ぅ兄さんっ!)
 甘いまどろみの中を漂っていた身体が、急激に浮上していく。
誰かの・・・声?俺を呼ぶ・・・
 (おき・・よっ!)
 思考が定まらない波の中で、ここにすがり付いていたいのにそれを邪魔されて朦朧とした頭の中で不機嫌になった。
 ん~・・・でも。
うるさいけれども、心地いい。
 ずっと聞いていたくなるような・・・馴染んだ、声・・・
 「豪兄さんっ!!」
 「うわっ!!」
 耳元で叫ばれた鼓膜が破れそうなほどの大声に、強引に眠りの縁から爽やかな朝へと引き戻された。
 起こし方は決して、爽やかとは言いがたかったが・・・
 突然の強襲に、布団の上に身体を起こした豪は目をパチパチとしばたかせる。
 「どんだけ寝汚いんだよ」
 呆れたように言いながら、腰に手を当てベッドサイドに立ち己を見下ろしているのは星馬烈。
俺の・・・・俺、の・・・・・・
 ・・・・・・・・・ん?
 あれ・・・?えっと・・・烈、兄貴?
 え・・・?烈兄貴が、なんで俺のこと兄さんって・・・・?
 だって、俺は・・・俺、は・・・
 「・・・・・烈?」
 「まだ寝ぼけてんの?兄さん」
 兄・・・さん・・・?
 烈・・・そうだ、烈だ。
 あぁ、何を寝ぼけてたんだか。目の前にいるのは自分の1つ年下の弟、烈だ。
 一つ下で、人当たりがよくて性格もよくて顔もよくて勉強も運動(これだけは俺にはかなわないけど)も出来る。
 なんで兄貴だなんて思ったんだろう。
 「ったく早く起きてよ、豪兄さん。下で母さんが待ってるんだから」
 そう言って、とっとと部屋から出て行く可愛げのない弟。
 くそう、と思いながらもしぶしぶベッドから足を下ろした。
 と、
 「あ、それから」
 閉じたはずの扉がもう一度開いて、赤い髪がひょっこりと姿をあらわす。
そして・・・
 「誕生日、おめでと」
 ぶっきらぼうにそう言った可愛くない弟は、微かに頬を染めて階下へとかけていった。
 あぁ・・・そうか・・・今日は
 今日・・・は・・・


 (・・・・きろ)
 これで同じ年だとはしゃいでいたアイツから、また一歩俺が遠ざかる日。
 (・・う、お・・・ろって・・・)
 アイツがまた、ちょっとだけ不機嫌になる日。
 (・・・おい、ご・・・)
 なんでそんなことを気にするんだろう。
別に俺は・・・どこにも行かないのに・・・
そんなことを思いながら、思わず顔がにやけた。
 全く。いつまで経っても、
 「起きろって言ってんだろっ!!バカ豪っ!!!」
 「うわっ!!」
 耳元で叫ばれた鼓膜が破れそうなほどの大声に、強引に眠りの縁から爽やかな朝へと引き戻された。
 起こし方は決して、爽やかとは言いがたかったが・・・
 突然の強襲に、布団の上に身体を起こして豪は目をパチパチとしばたかせた。
 「えっ・・・烈・・・?」
腰に手を当てベッドサイドに立ち己を見下ろしているのは星馬烈。
俺の・・・・俺、の・・・・・・
ゴッチーンっ!!
 「いってぇっ!!」
 拳骨で殴られた。
 「寝ぼけてんじゃねぇよ。お兄様を呼び捨てにすんな。バカ豪」
 あれ・・・?そう・・だ、烈兄貴・・・?
 なんで、烈だなんて呼んだんだろう。
 そんなことをすれば、可愛い顔をした兄が不機嫌になることは目に見えているのに。
 なんか夢の中で・・・よくは、覚えていないけれども・・・
 「おい、いつまでぼけーっとしてんだ」
 忘れかけている夢の尻尾を掴もうと思考を飛ばしていたら、もういっちょっとばかりに頭をはたかれた。
 「いてぇっ!」
 人の頭を遠慮なく、これ以上バカになったらどうしてくれるんだ。
 くそう、と思いながらもしぶしぶベッドから足を下ろした。
 と、
 「あ、それから」
 閉じたはずの扉がもう一度開いて、赤い髪がひょっこりと姿をあらわす。
そして・・・
 「誕生日、おめでと」
 えっ?
 そう言って、赤い髪はさっさとドアの向こう側へと消えていく。
 ほんのり、顔が赤くなっていたような気がするのは気のせいだろうか。
 「あー・・そっか、今日は・・・」
 俺の誕生日だ。
 2つ離れていた年の差が、また1つに縮まる日。
 その差がなくなることなんかないけれども、最近ではまぁそれでもいいかなって思い始めている。
 烈兄貴って、そう呼べるのはだって俺だけなんだから。
 それに・・・
ベッドから降りて慌てて兄貴の後を追う。
 「・・・・豪」
 しっかりと支度の終わっている兄貴の横に、パジャマのまま並んだら妙に嫌そうな目で見られた。
 「あんだよ」
 「お前・・・また背が伸びたりとかしてないだろうな?」
 十数センチ下から嫌そうに顔をしかめて訪ねてくる図なんかも、格別だったりするわけで。
 「あー・・・そういや、ちょっと伸びたっけか?」
 プチッっという音が聞こえた気がしたとたん。
 「お前なんか死ねっ!!」
 「ぎゃあぁあっ!!!」
 ずだだだだだっと、階段を蹴り落とされた俺の身体は階下の床へと叩きつけられる。
 「いってぇーっ!!」
 あぁ、ちくしょう。
 ぜってー痣とかできてるって。・・・・・まぁ、痣以上の致命傷はないみたいだけど。
 この頑丈な身体があるから、最近の烈兄貴は特に容赦がない気がする。
 「当然の報いだ」
 いつまで成長期なんだ。鬱陶しい。とっとと止めろ。
 と、理不尽なことを言いつつ降りてくる兄貴に、もうちょっと可愛い弟を労わって欲しいと思うのは贅沢だろうか。
 ったく・・・最近特に、俺が兄貴に逆らえなくなったからって・・・
 ぶつぶつと心の中で呟きながらも、あまり悪い気はしない。

 些細なことに気付いて、些細なことを気にして。

 そうやって意識してくれるのも、きっと俺が弟だからだ。
 俺だけの特権。
 来年も、再来年も。


 「ひっでーよ!烈兄貴っ!」








 きっと、10年後も。



作品名:逆転 作家名:霜月十一