星は見守っている
ふわふわと揺れる髪を風に遊ばせ、外へと躍り出るタクト
湧き上がる(それはどんなものか分からないが)想いを静めようと飛び出したのはいいが、心を持て余し足を止める
はあ、と息を吐き、ふと空を見上げると広がる満天の星、星、星
「わ、あ…」
思わず感嘆の声を漏らし、仰ぎ見すぎてひっくり返りそうになり慌てて体勢を戻し、思わず一人照れた
もっとよく見れる場所はないかと見渡すと、ちょうどいい丘を見つけ近寄ると草むらに寝転がる
「……壮大だ、な」
なんかどうでもよくなりそう、と手を空に向かって伸ばすと小さく呟く
そのまま、星を掴むように動かしたり流れる星を追うように指でなぞったり遊んでいると、くすくすと笑う声が聞える
ばっと上半身を起こし振り向くと、そこには楽しそうに笑うスガタがいた
今だ笑みをたたえたままタクトへと近付き、今晩は、と挨拶をする
「ふふ、随分と可愛らしい動きをするものだね」
「こ、今晩は。…なんだ見てたのかよ」
声、かけてくれたってよかったのに、と恥ずかしさに口を尖らせ、恨めしそうに相手を見つめるが頬は赤く染まり効果はない
「ごめんごめん。あまりにも楽しそうだったから」
「た、楽しそうっていうか…星に見惚れていただけ!」
「星を指で追っていたのも?」
くすり、と微笑を浮かべるとタクトの隣に座り、再び寝転がる相手を覗き込み目にかかる前髪を払うと、その見た目と違う手触りに目を細めた
「う、本当どこから見てたんだよ…」
前髪から頭に移動する手に鼓動を煩くさせながら、じっとしているタクト
(何でこんなに…心が煩い)
「…髪柔らかいんだな」
ふわりとした触感を楽しむかのようスガタは撫で続け、顔を徐々に真っ赤にするタクトに気付かない──いや、それすらも楽しんでいたのかもしれない(なんて意地の悪い)
猫、みたいだな、と囁くように零され、もう耐えれないとばかりに相手の手を掴むと起き上がり、熟れたトマトのような顔で睨みつける
「……ッ、あ、ああ、もう!ほ、星が見えないだろっ」
もう片手で空に指を差し、掴んでいる手に力を入れて、きっ、と見つめるその姿はまるで誘っているよう
ほんのり熱の篭ったスガタの視線にタクトは気付かない
「ああ、すまない。なら星を…楽しもうかな…」
そう言ってスガタは掴まれている手を逆に引き寄せ、相手の目を覗き込んできた
あまりの近さにタクトは目を見開き、ひゅっと息を呑む
──ああ、ほら…星が綺麗だ、と目の中に映る光景にスガタはふわり微笑みかけ、頬に触れる
その感じる熱に動けず、微動だにしないタクト
警戒する子猫のように固まる相手に苦笑を浮かべ、スガタはそっと額にキスを落とすのであった
───確かに、ここに僕らはいるよ。生きているんだ
星は静かにその行方を見守っている
……恋、とは何か。想いとは何か。いずれ気付くであろう、少年たちを…