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涼風 あおい
涼風 あおい
novelistID. 18630
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俺の嫁

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「おかえり!音無っ」
「ただいま、日向」
 仕事から帰宅すると白いエプロンを着けた日向が菜箸片手に出迎えてくれた。日向の笑顔に俺も自然と笑顔になる。
 目線を日向からキッチンへ向けると、鍋がぐつぐついっていた。
「鍋、大丈夫か?」
「おっといけね!」
 日向が料理に戻ったので、俺は先に着替えることにした。
「あ、お風呂も沸いてるぞー」
 一緒に暮らすようになってから気づいたことだが、日向はちゃらんぽらんのようでいて、思いのほか色んなところに目の届く。思い返してみれば、高校時代も仲間思いのいいヤツだったから、根っからの世話焼きなのかもしれない。
「いや、風呂は後で日向と入るし。折角なら温かいうちに食べたい」
「そっか。あと少しでできるから、ちょっと休んでろよ。お前最近ずっと帰り遅くて疲れてるだろ?」
 自分だって仕事があるのに家事引き受けて、俺のことまで気遣ってくれるなんて、かいがいしいよな。
「大丈夫だよ。日向がいれば大丈夫なんだ、俺」
 何言ってんだよと笑う日向を背中から抱きしめる。
「ちょ、音無危ないって!」
 とかなんとか言いながらも邪険にしないから優しい。
「なぁ日向、俺達一緒に住んでるし、もう事実婚だよな?」
「え…あぁ…まぁ…指輪もしてるしな…法的には無理だけど」
「だよな、じゃあさ、どうする?」
「何が?」
「名前だよ。どっちの姓にする?」
「はぁ!?」
 今更といえば今更だが、同居するときに話を振ったのにスルーされて以来この話はしなかった。表札をつけるときも、日向がとっとと連名で書いて出していた。
「本当は嫌なのか?俺との結婚・・・。だから苗字も変えてくれないのか…?」
「いや、だって日本の法律じゃ養子縁組でもしない限り音無には変えられないだろ?」
「でも普段名乗るくらいはいいじゃないか。それともやっぱり俺の苗字なんて名乗りたくないか?」
 肩越しに日向の顔を覗き込むと、日向の顔は真っ赤になっていた。
「俺…音無の苗字名乗れるのは嬉しいけど……けど、俺から日向の名前を取るとっ…」
「秀樹だな」
「うあああああ!!!それは嫌だぁぁ!!!」
「俺は好きだぞ、秀樹」
「やめてくれええええ!!!」
「秀樹」
「ああああああああああ!!!!」
「ひできち」
「ぎゃあああああ!!!!」
「ひできんぐ」
「ぐああああ!!!ておい!!」
 思ったより早く気づいたな。日向が秀樹と呼ばれるのが嫌でこの話を避けていたのには気づいていた。それでも俺にすら呼ばせてくれないのが不満だった。
「あ、鍋焦げてる」
「ああああああああ!肉じゃががあああ!!!」
 日向をからかうのはおもしろい。反応がいちいちかわいすぎて困る。涙目になった日向を押し倒したい衝動を抑えて、額に口付けた。
「日向、ごめん」
「うぅ・・・音無のバカ・・・」
 かわいらしさに思わず笑いがこぼれ、また日向に怒られた。
「それで、結局音無秀樹になるのは嫌なのか?」
「その話はもういいよ・・・無理にどっちかに合わせなくてもいいじゃんか」
「だって子どもがかわいそうだろ?」
「子どもできませんからっ!!」
 今の科学の進歩ならば不可能でもなくなる日が来ると思う。そうなったら俺は日向との子どもがほしいと思っているから、決して冗談で言ったわけではない。
「じゃぁ音無が日向になってくれよ」
「・・・嫌だよ」
 日向がしょぼんとうな垂れて、日向結弦になるのが嫌なんだ…とかぶつくさ言っている。日向が嫌なわけじゃないんだ。
「日向にしたら日向が夫じゃないか。日向は俺の嫁だろ?」
「〜〜〜〜っ!!」
 顔を真っ赤にした日向を見て、もうでこちゅーだけじゃ治まらない自分を抑える気はなかった。
 この日は結局、真夜中に冷めたご飯をレンジで温めて食すことになった。


 その晩、啼かせながらどさくさに紛れて音無秀樹を名乗ることを承諾させた。表札は俺が書き換えておいた。
 別に日向のままでもよかったのだけど、音無秀樹にさせて独占欲を満たしたかった。明るい日向がみんなの日向でなく、俺だけの日向でいて欲しかったから。

「おかえり!結弦!」
「あぁ、ただいま、秀樹」

 苗字を音無にし、それなら呼び方は下の名前だよなと有無を言わさずに承諾させた。お互いまだ呼びなれなくてどきどきするけど、このどきどき感もいいなと思う。
作品名:俺の嫁 作家名:涼風 あおい