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【デュラララ!!】あいのうた【腐向け】

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「――♪」
 歌が、聴こえる。
 優しい歌だ。とてもとても――優しい。

「……」
 薄らと目を開き、何度か瞬きをする。霞んでいた視界が次第に鮮明になり、津軽の両目は声の主をとらえた。
 白くてふわふわのコートに身を包んだ黒髪の少年――否、青年であろうか、どことなく幼く見えるその風貌の人物を珍しく下から見上げる体勢で、津軽は眠っていたらしい。
 手を伸ばしてそっとその頬に触れれば、彼は歌うのを止めて津軽を見下ろしてくる。赤い瞳が柔和に微笑んだ。
「つがる、起きた?」
「――ん、」
 津軽の手をそっと自身のてのひらで包んで、サイケは笑う。
「サイケ、ごめん……脚、痺れてない?」
 津軽がサイケの膝枕から起き上がりながら気遣うように言えば、サイケは大丈夫だよ、と軽く笑う。彼の感情に連動して動くことのあるらしいヘッドフォンのピンク色をしたコードが、嬉しそうにラインの丸いハートを形作った。
「俺、どのくらい寝てた…?」
「43分28秒。良く寝てたね。疲れてたのー?」
「ううん……そういう訳じゃない」
 津軽がサイケの隣に座り直すと、サイケはちょこんと膝を抱えて津軽の肩に頭を預ける。
「えっへへー」
 二人の身体に一周させてもまだ余る長いコードを指先でいじくりながら、サイケはころころと笑う。基本的に津軽といるときには笑顔であることの多いサイケではあるが、今日は殊に機嫌が良いようだった。
「何か良いことでも、あったのか?」
 懐から煙管を取り出しながら問いかければ、サイケは上目遣いに津軽を見上げてくる。
 オリジナルの臨也と見目ばかりはよく似ているが、根っからの無垢さや無邪気さ、子供っぽさは臨也には無い。それどころかサイケと臨也は正反対の性格をしているようなものなので、津軽は臨也に会う度に微妙な心境になった。
「いいこと、あったよ」
 ぴとり、とサイケが更に密着してくる。温かい。
 サイケの唇が小さく歌を口遊む。ちらり、と津軽を見上げてくる赤い瞳は歌を紡いでいる時だけどこか大人びて見えて、ちょっぴりドキドキした。
「――♪」
 サイケの歌に聞き惚れ、その姿に見蕩れて。
 津軽は煙管を咥えながら一度ゆるりと目を閉じた。
 あぁ、優しい。優しい歌だ。
 夢の中でも聞こえてきたのはサイケの声だったのか、と納得して眼を開く。自分が眠っていた間、ずっと歌ってくれていたのだろうか。
 歌い終わったらしいサイケが口を閉じて、津軽の左手に自分の右手を重ねてくる。きゅ、と指を絡めて甘えるように身体を擦り寄せた。
「サイケ?」
 首を傾げれば、サイケは膝立ちになって移動し始める。
「おれが歌ってるとき、つがる、凄く気持ち良さそうな顔してくれる」
 そう言い、サイケは津軽の前に回るとぎゅっと自分よりも一回り大きな身体に抱きついた。ヘッドフォンのコードがゆらゆらと楽しげに揺れて感情を表す。
「眠ってるときも、笑ってくれる。それが、おれは幸せなんだ」
 にへ、と口元を緩めるサイケに瞬きをして、津軽は指を絡め直す。
「俺、サイケの歌、好きだから……。聴いてると、しあわせになる」
「そうなの? 嬉しい! おれもつがるの歌大好きだよ!」
 ぎゅぅっと抱きつく力を強いものにしてサイケは動物のように津軽に甘える。津軽はそれを受け止めて優しく髪を撫でてやりながらことんと首を傾けた。
「サイケは、俺が笑うと嬉しい……?」
「うん!」
 間髪置かず返された答えに、ほんわりと津軽の胸の奥が温もる。
 無邪気なサイケの頭をわしわしと撫でて、ちょっとずれてしまったヘッドフォンを元の位置に戻してやる。それからぎゅっと細い身体を抱き締め返し、津軽もまた幸せそうに笑った。
「俺も、サイケが笑ってると嬉しい」
 サイケはその言葉にちょっぴり顔を赤くして、えへ、と声に出す。
「それなら、おれずっと笑ってるね。それで、いっぱいつがるに歌ってあげる!」
 つがるが嬉しいとおれも嬉しい、と屈託なく笑うサイケの柔い頬にちゅっと一つキスをする。するとサイケもちょっぴり背伸びをして津軽の頬に口吻けをしてくれた。
 こんな些細な戯れが――とてもとても大事で、愛おしくて、
「サイケ、すき」
「つがる、だいすき!」
 一度唇同士を重ね合わせた後、二人は一緒に幸せな歌を口遊み始めた。




「……ねぇシズちゃん、」
「黙れノミ蟲。何も言うんじゃねぇ言ったら殺す」