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赤と青の飴玉

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その部屋は鳥籠。
中で歌う小鳥はこの島の巫女、気多の巫女。
まだ可憐な少女だ。

「また、こんなに」

床に無数に散らばったのは赤と青の飴玉。
一つ二つ星屑のように散らばった飴玉を拾い元の
缶の中へと入れていく。

「カタシロ?丁度いい所に」

薄暗い部屋の中にはいくつかの家具が並び
檻の中とは違う囚われの青年がベットに横たわったまま
こちらへ寝返りをうち顔を見せる。

物語の紡ぎ手の巫女は歌いつづける。

「何か?」

南十字学園の理事長にしてリーダー不在の綺羅星十字団
の仮のリーダーである男だ。
永遠を約束された青年。

床中に転がる飴玉を集めてひざまずいた所はベットと同じ
高さで目線が交差した先の瞳は奥できらりと輝く。
青年は気だるげに腕を回して体重をそのまま預け
顔を近付けてくる。
床に倒れこむ衝撃と口付けと。
飴玉が転がる床へと押し付けられてやっと口を離す。

「この飴甘すぎないか?」

さっきまで彼が口に入れていた飴は今口の中で
砂糖の味を口中へ広がらせている。
確かに甘い。
彼の舌と飴玉の甘さが合わさってどこか蕩けるような
意識の中でぼんやりと見つめる先は闇。
薄暗い部屋はより一層薄暗く感じる。

物語を歌い続けていた少女はさらなる自由を求めて、
それとも歌い疲れたのかさっきまでの歌声は
すやすやという寝息にかわっている。

口移しで飴玉を押し付けた青年は満足気に笑みを浮かべる。

「まだたくさんある。」

文句を言って人に押し付けたものと同じ飴玉を
一つ二つ右手で弄ぶ。
先ほどとは違う色の飴玉を口にし眉根を寄せる。

「こっちも甘い。もっと食べるかい?」

再び口付けを交わして飴玉が入れかわる。
口の中で一回り小さくなっていた飴玉と元のサイズの飴玉。
小さくなった事に慣れてしまった口は元のサイズの
飴玉を少し大きく感じる。

「ぼくはこうしていたいよ…ずっと…。」

胸元に埋めたままの頭は囁き続ける
儚く可憐な少女のように。

「王様が来て、僕ら偽者が必要なくなたとしてもね。」

手にしていた青い飴玉を床に転がし
残念そうな顔をする。

「本当のお楽しみはこれからだ。」

床の上を転がる青い飴玉は赤い飴玉にぶつかって
また床の上を転がる。
床の上を無数に転がり続ける飴玉たちは誰かの心のようだ。

甘く甘く溶けて。
落ちて。
作品名:赤と青の飴玉 作家名:ミヤセ